移住に興味を持つ者は多いが、難しいのが移住先選びだろう。移住はしたものの、描いていた環境や生活とは異なりやむなく撤退というケースも少なくない。
そんな移住先選びの指針とも言えるのが、どれだけの移住者がその土地に住み続けられたかを示す「移住定着率」だ。これに関するデータが総務省「令和4年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」にある。
「『協力隊の隊員』とは、都市地域から過疎地域に住民票を異動し、生活の拠点を移した者のことです。地方公共団体から認められ『地域おこし 協力隊員』として一定期間居住し、さまざまな活動を行いながら、その地域への定住、定着を図ることを目的としています」(全国紙記者)
総務省のデータは、19年度から21年度末に任期を終えた隊員に限定した統計で、全都道府県の移住定着率を公表している。
それによると、神奈川県と大阪府は100%だったが隊員数がどちらも極端に少なかったのでここでは除外する。それを除くと1位は山梨県(84.7%)。続いて2位が同率で静岡県と山口県(84%)、4位北海道(81.6%)、5位東京都(81%)という結果になった。
一方、住み続ける者が少ないワースト地域は、1位埼玉県(54.8%)、2位佐賀県(60.5%)、3位が京都府と長崎県(61.2%)、5位秋田県(61.6%)となっている。
「移住定着率とは隊員時代に活動していた自治体、またはその近隣の自治体に居住する人を示す割合です。東京の定着率が高いことを『当り前』と思うかもしれませんが、都内で地域おこし協力隊を受け入れているのは、人口の少ない奥多摩などの西部と伊豆諸島なんです。同じ地方でも定着率が高い県、低い県が混在していますが、全体的に四国と九州は低めになっていますね。ちなみに四国と九州で全国平均(73.8%)を超えているのは鹿児島県(74.3%)だけでした」(移住アドバイザー)
隊員は基本的に任期終了後もその土地に住むつもりで移住しているというが、それでも断念して土地を離れることもある。その理由はというと…。
「圧倒的に多いのが人間関係によるもの。田舎の人付き合いは濃密で、暮らしていくには高いコミュ力が必要です。実は、地域おこし協力隊が制度化した09年からの定着率を見ると65.4%とさらに低くなっていますね。しかし、これでも一般の移住者に比べれば定着率は高いと言われています」(前出・アドバイザー)
田舎暮らしに憧れる者も多いが、それだけでは越えられない壁もあるようだ。