デュアルライフとは、自宅などの生活拠点を2カ所以上持つ新しい生活スタイル。以前から平日は職場に近い都心、週末は自然豊かな郊外で過ごすという二重生活を行う人はいたが、コロナ禍により企業のテレワーク化が進んだことで興味を持つ人が増えているという。
「もともと欧米で生まれた生活様式で、単なる移住に比べて自由度が高いのが特徴です。例えば、司会者でタレントの大橋巨泉さんは生前、日本とニュージーランド、オーストラリア、カナダと国内外に複数の拠点を持ち、行き来する生活を続けていました。まさにデュアルライフの先駆けと呼べる存在ですが、現在は彼のような富裕層ではなく中流層にも広がり始めています」
そう説明するのは、デュアルライフに詳しいライターの高島昌俊氏。彼自身も5年前から東京と北海道の二拠点生活を送っている。
「生まれ育ったのは埼玉ですが、両親の出身が北海道なんです。僕自身も高校・大学時代は親元を離れて北海道で暮らしていたため、いつかまた戻りたいとは思っていました。しかし、仕事の拠点はあくまで東京で、完全な移住となると難しい。そこで都内にも拠点を残し、行ったり来たりの生活を選んだわけです」
北海道の自宅は札幌市内で、最寄りの駅からは朝晩限定ながら新千歳空港行きの快速列車に乗ることができる。そのため、札幌の自宅から羽田までなら最短2時間半ほどで向かえるとか。
「羽田から都内各所に移動するのにさらに時間はかかりますが、この程度なら新幹線を使って東京と大阪市内を行き来する時間とほぼ同じです。ただ、飛行機代を抑えるために安いLCCを使うことも多く、その場合は成田からの移動なので少し面倒ですけどね(笑)」
それにいくらLCCでも飛行機での移動が必要な距離になると、年間の交通費もかなりの額になるはず。一般のサラリーマン家庭が簡単にマネできるレベルではない。
「でも、千葉の房総半島や静岡、山梨に長野、福島あたりならそこまで交通費もかかりません。実際、これらの場所と都内を往復してデュアルライフを送る人も多いですよ。既婚者なら家族は地方に住まわせ、都内に自分ひとりが寝泊まりできるアパートがあれば十分ですから」
テレワークを導入している会社でも定期的に出社しなければならないケースもあり、郊外や地方に完全に引っ込むのは難しい。そんな人にとっても、デュアルライフは今後のライフスタイルの選択肢のひとつになりそうだ。
(トシタカマサ)