はたして、アメリカ軍が撃墜した「白い物体」は偵察気球なのか、はたまた民間の気象研究用なのか?
米本土上空を飛行していた中国から飛んできたとされる気球を、米軍の最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」が空対空ミサイル「サイドワインダー」により撃墜したのは、4日午後(日本時間5日未明)のこと。米国防総省によれば、気球は先月28日にアメリカ・アラスカ州アリューシャン列島北の防空識別圏から侵入。30日にはカナダ空域に入ったものの、再び31日にはアメリカ北西部のアイダホ州の上空に出現。そして、今月1日にモンタナ州、4日午後に南部サウスカロライナ州沖の領海の上空に移動し、米軍により撃墜され海に落ちたとされている。
「気球は、白いバルーンの下にソーラーパネルのような装置がついたもので、全長はおおよそバス2〜3台分。気球が通過したモンタナ州には、核ミサイルを配備する空軍基地があることから『偵察気球』と断定。バイデン大統領が撃墜命令を出したようですが、中国政府はあくまでも『民間の気象研究用飛行船』と説明。明白な主権侵害と国際法違反だとして米国を非難し、対抗措置の可能性を示唆しています。とはいえ、気球の残骸は周辺約11キロの海域に散らばったとはいえ、すでに米軍による大規模な破片回収が行われているので、それを分析すれば早い段階で結論は出るはず。偵察気球だった場合は、米中関係の緊張が高まることは必至。むろん、西側諸国の対中政策にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう」(全国紙記者)
今回の偵察気球騒動を受け、迎撃前日の3日、ブリンケン米国務長官は予定していた訪中の延期を発表したが、実はこの訪中でもう一つ、中国側に説明を求めなければならない、ある重要な議題があった。それが、中国による掟破りともいうべき、ロシアへの軍用品輸出だったというのだ。
「気球が撃墜された4日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が、複数の中国企業がロシアの国営軍需企業に、戦闘機の部品や地対空ミサイルシステムに使われる機器などの軍用品を輸出していることをスッパ抜いたんです。ただ、このタイミングでのスクープ記事ですからね、当然政府筋からのリークがあったことは想像に難くない。記事によれば、ロシア税関の8万4000件以上の記録を分析した結果、昨年8月には中国国営の軍需企業が軍用ヘリコプターの航法装置を出荷。さらには、別の電子機器企業は電波妨害機器、また国営軍需企業は戦闘機『スホイ35』の部品を120万ドル(約1億5800万円)で出荷していた記録もあり、動かぬ証拠が残されていたとしています」(同)
ただ、同紙の取材に対し、在米中国大使館の報道官は「事実無根であり、全くの臆測で意図的に誇張されている」と、いつもの主張を繰り返している。
ともあれ、世界の治安を脅かす気球騒動に、掟破りの「軍用品輸出」と専横な振る舞いを繰り返す中国に対し、欧米諸国の対応が厳しさを増すことは間違いないだろう。
(灯倫太郎)