新コーチ・名波浩と前田遼一に託された日本代表「積年の改善点」

 日本代表の新たなコーチに、名波浩、前田遼一両氏の入閣が決まった。

 カタールW杯終了後の昨年末、森保監督の続投が決定。しかし、横内昭展コーチ、上野優作コーチがそれぞれジュビロ磐田、FC岐阜の監督に就任することが決まっており、後任に誰が選ばれるのか注目されていた。

 結局、戦術面を担当していた横内コーチに代えて名波氏、FWコーチ的な存在だった上野コーチに代えて前田氏が就任した。

 日本代表の課題は攻撃力。特に決定力はいまだに解決していない。W杯でもカウンターでは点が取れるが、コスタリカ戦のように相手が引いて守備を固めてくると崩せない。それは森保監督も選手もわかっているはず。

 W杯でベスト8以上を目指すのであれば、攻撃面の改善は絶対条件。そこで、超攻撃的だったジュビロ磐田の黄金時代を知る2人に白羽の矢が立ったのだろう。

 名波氏の現役時代は今さら言うまでもなく、ジュビロ磐田の司令塔として活躍し、イタリア・セリエAのヴェネチアでもプレーした。日本代表でも背番号10番を付け、日本のW杯初出場に貢献。指導者としては、ジュビロ磐田で約5年間監督を務めてJ2からJ1に復活させ、J1でも6位まで引き上げたが、最後のシーズン途中で辞任。近年はJ2で苦戦していた松本山雅の監督に就任したもののJ3に降格。翌年のJ2復帰にも失敗している。現役時代に比べて、指導者としての成績はパッとしないが、理論的な考え方やモチベーターとしての評価は高い。

 前田氏は、J1で2年連続得点王に輝いたオールラウンドのストライカー。ジュビロ磐田の中山雅史、高原直泰といった先輩の良さを引き出して、J1通算154点を決めてきた。指導者としての実績は2020年に引退するとジュビロ磐田のユースのコーチ、監督を務めた。どこからでも点が取れる日本を代表するストライカーだった。

 ただ、コーチが変わったからといって、すぐに日本代表の課題が解消するわけではない。クラブチームなら、シーズンを通して、毎日のように選手と顔を合わせて指導ができるが、日本代表はそうはいかない。国際Aマッチウイークでなければ代表選手が集まらない。しかもメンバーの半分以上の選手が欧州でプレーしているから、全員そろってトレーニングができる時間は限られてくる。

 その辺は森保監督も十分に理解しているはずだ。新しいコーチが日本代表に何をもたらすのか。どんな化学反応が起こるのか、長い目で注目したい。
 
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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