12月11日、国際サッカー連盟(FIFA)の臨時総会が行われ、2030年の男子ワールドカップ(W杯)はスペイン、ポルトガル、モロッコの3国共催に、34年はサウジアラビアでの開催が決まった。近年、オリンピックなど大規模な国際スポーツ・イベントでは、1国開催の経済的負担の大きさから、複数国での共催が増えている。ただし逆に、22年のカタールW杯がそうだったように、中東の金満国での開催もある。そのためサウジ開催が決定したことで、前回のカタールW杯で露呈
「サウジと言えば、王室に批判的だったサウジのジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害された事件で知られるように、言論の自由で問題がある。また中東各国がそうであるように、女性の地位とLGBTQへの不寛容、外国人労働者は出国の自由がないといった問題もあり、すでに国際的な人権団体が今回の決定に批判の声を上げています。しかもサウジ開催は、実質的な同国指導者のムハンマド皇太子が進める『サウジ・ビジョン2030』に沿ったものなので、特定の個人や国家がスポーツを利用して自らのイメージ向上を図る『スポーツ・ウォッシング』に他ならないというわけです」(サッカーライター)
また金満国家なだけに、計画では大会で用いられる既存会場は4カ所で、9.2万人収容のスタジアムなど9カ所は新設されるという。つまりそのぶん、また外国人労働による過酷な大規模工事の敢行が予想される。
加えて、中東ならではの地理的な問題もある。
「通常、サッカーW杯は夏季に開催されますが、サウジの夏は43度にも達する猛暑で、とても長期にわたり試合をすることなどできません。同じ状況のカタール大会は冬季開催になったわけですが、そのためにヨーロッパの主要リーグは日程変更を強いられ過密日程になったことから、選手のケガが激増しました」(同)
国際的なスポーツだけに、世界のあらゆる国での開催は良いことだが、もしカネの事情優先で選手をはじめあらゆる人々にシワ寄せが行くというのであれば本末転倒だろう。
(猫間滋)