韓国ソウルの繁華街・梨泰院での雑踏事故対応をめぐり、警察への批判が止まらない。尹錫悦大統領は7日、「警察業務の大々的な革新が必要だ。惨事の真相究明を徹底し、厳重に責任を問う」と、この件に関し、改めて厳しい対応で臨むことを強調した。
今回の事故をめぐっては、警察に400件以上の通報があったにもかかわらず、それを放置。さらに幹部への認知が遅れるなど、警察による、あまりにもずさんな対応が次々と明らかになっている。
韓国在住経験があるジャーナリストが語る。
「韓国警察庁が4日に明らかにしたところによれば、事故当日、警察庁のトップは休暇中で、かつての同僚らと山に登り、キャンプ場で午後11時ごろ就寝。状況担当官がメッセージや電話で2回報告したものの、寝ていて気がつかず、同氏が事故を知ったのは事故発生から2時間近く経過した、翌30日午前0時過ぎだったといいます。休日とはいえ、警察を束ねるトップとしては、いくらなんでも危機意識がなさすぎる。そんなことから、警察全体のぬるま湯のような姿勢にも批判が集中しています」
さらに今度は、現場を管轄する龍山警察署が事前に用意されていた「警察官増員が必要」とする報告書を隠蔽目的で削除していたとして、特別捜査本部が同署の情報課長と係長を職権乱用や証拠隠滅の疑いで捜査を始めたというから、驚くばかりだ。
だが、前出のジャーナリストは「韓国警察の不祥事は今に始まったことでない。驚いている国民はいませんよ」と言い、こう続ける。
「韓国は1948年の建国から90年までの軍事政権下では警務部部長が警察のトップの座にあったが、91年7月の民主化移行にともない『警務部』から『警察庁』に改称。任期も2年に制限されました。しかし驚くことに、警察庁発足から長官に就任した20数人のうち、最後まで任期を全うしたのは、ほんの数人。あとの半数は被疑者として捜査を受け、逮捕されているんです。韓国には古くから警察や検察と政界、経済界、官界、芸能界等との癒着があり、それがいわば伝統ともなっているため、現役中にズブズブの関係になり、退官後にその事実が明るみに出るケースも後を絶たない。それが『韓国病』といわれる由縁なんです」(同)
韓国では大統領が退任後に本人や家族が収賄容疑などで逮捕されるという話はよく聞くものの、まさか警察のトップまでも…とは驚くばかりだが、
「そのため、韓国の国民感情には警察に対し『権力の手先』『弱い者イジメ』『上から下までワイロまみれ』など腐敗イメージが根強い。そのため、今回のような不祥事が起こると、必ずマスコミに袋叩きにされるという構図が出来上がっているんです」(同)
警察の不祥事は当然、政権批判に直結するはず。尹大統領は「一点の疑問もないよう真相を明らかにせよ」と指示し、問題追及の姿勢を強調しているが、はたして‥‥。
(灯倫太郎)