製造したツナ缶の中にゴキブリとみられる虫が混入し、ブランドイメージが傷つけられたとして、はごろもフーズが下請けの製造会社である興津食品に損害賠償を求めていた裁判で、静岡地裁は8日、興津食品に対し約1億3000万円の支払いを命じた。この判決に世間では同情をもって受け止められているようだ。
「2016年10月に山梨県内のスーパーでツナ缶『シーチキンLフレーク』を購入した女性が、缶詰内に1.5センチのゴキブリとみられる虫を発見しました。この際、はごろもフーズは女性には謝罪したものの事実を公表せず、自主回収も行わなかったのです。しかし、県が保健所に調査を要請し、これをメディアが報道したことで混入事件が一般にも知られるようになり、《ゴキブリ混入を隠していた》《なぜ自主回収をしないんだ!》など批判が殺到。炎上する騒ぎになったのです」(社会部記者)
はごろもフーズは、この騒動を受けて家庭用シーチキンの売上が想定より大幅に激減し、さらにクレーム対応のためにコールセンターを設置する費用などの損害を受けたと主張。ゴキブリが混入した商品を製造した興津食品に約9億円の損害賠償を求めて裁判を起こしていた。
「下請けに約1億3000万円の支払いが命じられたことにネット上では、《はごろもフーズの混入事件のことは覚えているけど、炎上したのははごろもフーズの対応が悪かったところも大きいと感じたが…》《今まで支えてくれた下請けをいじめるようなことをするなんて》《はごろもフーズは1億3千万円と引き換えに大きくイメージを悪くしたな》などはごろもフーズ側に対する厳しい声も多く見られました」(フードジャーナリスト)
なお、興津食品は混入事件の直後にはごろもフーズとの契約を打ち切られ、現在は廃業状態にあるという。
「担当の代理人弁護士は『わずかなミスで下請けが1億円も支払わなければならないのは非常に不合理で酷な判決』と控訴することを明らかにしています。混入が報道された当時、はごろもフーズは『混入は偶発的なもので連続性がない』と自主回収しない理由を明かしていましたが、偶発的な混入であれば下請けにそこまで賠償を求める必要があるのか、疑問ではあります」(前出・フリージャーナリスト)
今後、控訴審が行われるとみられるが、勝っても負けてもはごろもフーズには痛手となりそうだ。
(小林洋三)