ロシア男性がすがる「ヘルプデスク」「投降ホットライン」と、意外な逃亡先とは?

 ロシアのショイグ国防相は10月4日、部分動員令発令後、これまでに20万人超が招集されたと発表した。しかし、現地独立系メディアによれば、国外脱出がさらに加速し、既に40万人を超えるロシア市民が国を離れたとの報道もある。

 そんな中、ロシア人男性やその家族から「政府に徴兵されたくない」などさまざまな相談をSNSで受ける「ヘルプデスク」というメディアに問い合わせが殺到しているという。

「これを立ち上げたのは、ロシア語の独立系ニュースメディア『メドゥーザ』の前発行人のクラシルシュチク氏。同氏はロシア政府から『フェイクニュース法』で起訴され、隣国ジョージアに脱出。現在はラトビアを拠点に活動し、SNSで発信を続けています」(全国紙国際部記者)

「ヘルプデスク」には連日、戦争や警察から逃れるための避難方法や、外国への送金、VPN(仮想プライベートネットワーク)の設定の仕方などの問い合わせが相次いでいるというが、もっとも多いのが具体的な国外脱出方法。

「サイトでは、〈パスポートなし:アルメニア、カザフスタン、キルギスタン〉〈パスポートあり:アゼルバイジャン、エジプト、トルコ、ウズベキスタン、ジョージア〉〈シェンゲンビザ(協定国の短期訪問ビザ)あり:フィンランド、ノルウェー〉など条件別に、それぞれの国への脱出方法や難易度などがリアルタイムで配信されている。相談件数は日に日に増え、その数はいまや週に2万件を超えると言います」(同)

 また、ウクライナがロシア兵向けに開設した投降のためのホットライン「I Want to Live(生きたい)」にも、電話やメールが殺到。全国紙記者の解説によれば、

「ウクライナのテレビ番組に出演したウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフ氏は、投降したいと電話をかけてくるロシア兵の数は数千人を超えると明かしています。東部ハルキウ州の要衝を次々にウクライナ軍が奪還した後は投降を希望するロシア兵が急増、その数は日を追うごとに多くなっているそうです」(同)

 そして、徴兵を逃れたり、投降後の脱出先として彼らが望んでいるのが、中央アジアのキルギスタンなのだとか。

「これまでロシア人の主な亡命先といえばトルコやジョージアがあげられていましたが、このところキルギスタンへの流入が明らかに多くなっています。キルギスタンは旧ソ連の構成国ですが、独立後には『安価な労働力の宝庫』として100万人以上のキルギスタン国民がロシアに出稼ぎに来ていた。それがウクライナ侵攻開始以来、ロシア人がキルギスタンへ逃げ、現地で職を求めるという逆転現象が起こっていると米紙などでは伝えています」(同)

 背景には、キルギスタンのジャパロフ大統領が人権が保障される法治国家を自任し、「ロシアへ引き渡されるのを恐れる必要はない」と亡命に寛容であることも挙げられる。また、流入してきた高学歴で優秀なロシア人の頭脳を囲いこみたいという思いもあるようだ。

 戦線離脱、投降、国外脱出、亡命…歯止めがかからない状況はしばらく続きそうだ。

(灯倫太郎)

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