政府のメンツだけじゃなかった!習近平が「ゼロコロナ」を辞められない本当の理由

 3月28日以来、一部地域でロックダウン(都市封鎖)が続く中国・上海市。上海で暮らす2500万の市民が、いまだ自宅からほとんど外出できないという異常事態が続いている。食料調達問題は深刻化、市民は政府による食料の配給やネットスーパーを利用するなどしているが、
 
「ネットスーパーのサイトは全く繋がらない状態、運よく繋がっても商品は全くない。先週、2カ月ぶりに2時間だけ外出が許されましたが、スーパーに入るまでに4回も厳重な入場チェックがあり、結局買い物できたのは30分足らず。しかも、流通が滞っているため品不足が甚だしい。こんな状態で暴動が起こらないことのほうが、不思議でなりませんよ」(上海在住の日本人ライター)

 欧米など多くの国々が“ウィズコロナ”に舵を切る中、依然“ゼロコロナ”にこだわる中国。その最大の理由が、武漢で新型コロナウィルスを抑え込んだという成功体験と、そこから始まった政府のメンツとされる。

「実際、習近平が武漢全域をロックダウンし、厳しい封じ込めを行ったことで、コロナ封じ込めに成功したことは事実。ただその後、感染力が桁違いに違う新型株が出現。世界的に感染が広がってしまった。しかし、前回の成功で緊急時は民主主義より社会主義の方が優れていると大宣伝してきた習近平としては、いまさら看板政策をやめるわけにいかない。しかも、今秋には5年に1度の中国共産党大会があり、3期目の総書記続投を目指す以上、何がなんでも党大会前にコロナの感染爆発を防がなくてはならない。そのため、ゼロコロナ政策を続けるしかないというわけです」(同)

 それが事実なら、ゼロコロナは国民無視のとんでもない政策と言わざるを得ないが、前出のライターによれば、中国が“ウィズコロナ”に舵を切れないのは、もうひとつ重大な理由があるからだという。

「それが、中国性ワクチンの有効性です。現在、中国ではシノバック製ワクチンが使用されていますが、これは有効率が90%以上とされるファイザー製やモデルナ製に比べ、WHOが定めたワクチン承認最低水準の50%程度の有効率しかありません。そのため、このワクチンが提供された新興国や途上国では、接種後も感染・死亡が後を絶たず、他国の医療従事者の間からは不信感が高まっていました。中国政府自身も、自国ワクチンに自信がないのでしょう。結果としてゼロコロナ政策を進めるしかなく、それがいま中国の置かれている状況だと思います」(同)

 武漢での成功体験、政府のメンツに加え、自国ワクチンの有効性への不安からウィズコロナに舵を切れないとしたら、それはもはや悲劇としか言いようがない。

(灯倫太郎)

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