インターネットやマスコミをも巻き込んだ金夫人のスキャンダル報道は、疑惑が疑惑を呼んでいく。経歴詐称や株価操作、あげくは整形疑惑など多岐にわたり、ついには昨年12月末に謝罪会見を開くまで追い詰められる。もはや一巻の終わりかと思いきや、逆風を一気に追い風にしてしまったのである。デスクも驚きを隠さない。
「会見場に黒いスーツ姿で登場した金夫人は、自分の経歴の一部を誇張するなどしたことで『よく見せようとした』と経緯を説明。さらには、尹氏と結婚した経緯や流産した過去まで明かした上で『愛する夫を前に、私の過ちが恥ずかしい』とうつむき加減で素直に謝罪したのです」
この会見で世論は一気に逆転したと語るのは東京新聞編集委員・五味洋治氏だ。
「この会見で多くの国民は生の金建希夫人を見ることになりました。大きな目のアニメ顔、モノトーンの衣服、ペタンと平らな靴、シンプルな衣装で神妙に謝罪する姿を多くの国民は好意的に捉えたのです」
これで事態は沈静化するかに思われたが、今年に入って大統領選が過熱していくにつれ、金夫人へのバッシングが再燃。彼女のスキャンダルを執拗に追及するインターネットメディアが彼女とのやりとりを録音した7時間超にも及ぶ音声を公開し、波紋を呼んだのである。
「金夫人は記者の質問に対し、政治経験のない夫が政界に打って出たことについて『文在寅(ムン・ジェイン)政権が(尹候補を)育てた』『朴槿恵を弾劾したのは保守』など、舌鋒鋭く批判した。夫人は、選挙中から政治には関わらないと発言していたが、実際には鋭い政治見識があることを披露する結果となったのです」(ジャーナリスト)
この録音された肉声データでは、金夫人自身に降りかかったピンク嬢疑惑に関してこう説明している。
「私は騒がしいところが嫌いなの。クラシックや知的な会話をするのが好き。ナイトクラブは合わない」
と、暗にピンク店には在籍していないと真っ向から否定してみせた。さらに矢継ぎ早に続いたスキャンダル追及の質問に対しても、
「別の検事と同棲し、海外旅行に行った不貞疑惑を『何が悲しくて妻帯者と同居するだろうか』とハッキリと否定しています。それまでマスコミに出ることを控えていた夫人でしたが、この2回の釈明で、ますます注目度は上昇。尹氏は政治経験がゼロで、選挙中も失言が多かっただけに、かえって夫人の方が目立つことになった」(ジャーナリスト)
いわば「身の潔白」を高らかに宣言したことで、金夫人の人気はうなぎ登りに。ネットでは「ゴンサラン(ゴンヒを愛する)」というファンサイトが立ち上がるほどの盛り上がりで、性別を問わず、その一挙手一投足が注目されるようになったのだ。
「ファンサイトでは、彼女の顔写真付きのマスク、マグカップなども売り出された。さらには、女性ヒーローの映画のポスターに合成した写真などを掲載し、彼女をジャンヌ・ダルクのように礼賛している。会員数は日に1000人増加し、今ではその会員数は9万人以上に増えている」(デスク)
大統領夫人が元ピンク嬢という、絶体絶命の醜聞をグルリ180度転回させ、今や大統領の存在感がかすむほどの輝きを放っているのだ。
「金夫人は、韓国では『完売の女』と言われる影響力の持ち主です。選挙後の4月、ジーンズスカートにパーカー姿というリラックスした普段着で自宅前を警備する警察犬を抱擁する姿がSNSで広まると、その時に履いていた3000円のサンダルが即座に売り切れになったほど」(ジャーナリスト)
*「週刊アサヒ芸能」6月2日号より。(3)につづく