「ロシア入国禁止リスト」に安倍晋三元首相の名前がない最大の理由とは?

 5月4日、ロシア外務省が岸田文雄首相をはじめ、日本人63人に対し無期限でのロシアへの入国禁止を発表。ウクライナ侵攻における日本の対ロシア制裁への報復とみられるが、発表を受け対象となった国会議員らから批判の声が続出している。

「自民党の高市早苗政調会長は4日夜に自身のツイッターを更新、『上等やないかいっ。招かれても行かんわい!何故か関西弁になるんやが』と真っ先に意思表示していますし、共産党の志位和夫委員長も『私もリストに入っているようだ。私が行ってきたロシア批判は国連憲章と国際法に基づく当然の批判だ。自らに都合の悪いものだからと入国禁止とは、国際的孤立を深める愚かな行動だ』とツイッターでロシア側の対応を批判しています。リストには岸田首相、閣僚7人のほか、『参議院政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会』に所属する今井絵理子参院議員の名前もあり、さらには、政府に同調しているとして読売新聞社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏をはじめ、筑波学院大学の中村逸郎教授、スポーツ評論家の二宮清純氏など、メディア関係者や学識関係者も含まれています。ところが、不思議なことに安倍晋三元首相の名前がないことから、SNS上でも《やっぱり安倍さんは、ウラジーミルと同じ未来を見てるから?》《今井さん、ロシア出禁で安倍さんに勝ったってこと?いったいどういう人選なんだ》と、困惑の声が上がっています」(全国紙記者)

 安倍氏とプーチン氏とは、かつてお互いを『ウラジーミル』『シンゾー』とファーストネームで呼ぶ仲で、2019年9月の首脳会談では安倍氏が《ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている》と言葉をかけるなど、その蜜月ぶりは周知の事実だった。だが、ロシアによるウクライナ侵攻激化に伴い、掌返しとも思えるプーチン批判がエスカレート。4月には海外メディアでもプーチン批判を繰り広げ、話題になったことも記憶に新しい。

「そういう意味では、今回の入国禁止対象に安倍さんの名前があっても不思議ではなかった。ところが63人のリストには含まれていなかった。それはなぜなのか。推察できる理由としては、まず今回の対ロシア制裁がアメリカ主導に同調した現内閣によるものだということ。なので日本政府に対してはノーだが、過去に日露関係に貢献、現政権に直接関わってない安倍さんはOK、ということなのかもしれません。加えて今回の措置で、ロシアは経済人の名前を入れていません。つまり、ロシアにも経済交流を維持する中で、最低限のパイプだけは残しておきたいという思いがあり、その場合、外交的な窓口が必要になる。ロシアが、安倍さんの名前をリストに入れなかった背景には、そんな思惑が見え隠れしています」(同)

 政府関係者の中にはかねてから、政府として安倍氏を特使としてロシアへ派遣するという案もあったようだが、様々な事情で実現していないのが現状だ。

「仮にロシアにパイプを持つ安倍さんがプーチンと会談し、少しでも解決の糸口を引き出せたとしたら、世界の日本に対する見方も一変するはずです。ダメ元というと言葉が悪いですが、安倍さんには是非、なんらかのアプローチをしてもらいたいものです」(同)

 安倍元首相が培った外交力が示される時、それが今なのかもしれない。

(灯倫太郎)

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