5月10日は、韓国の尹錫悦（ユン・ソギョル）新大統領の就任予定日。3月の大統領選では与党の李在明（イ・ジェミョン）候補と得票率の差がわずか0.8％と記録的な大接戦だったが、北朝鮮との南北関係や悪化したままの日韓関係、日本以上に深刻な経済問題など新政権を待ち受ける課題は山積みだ。
それでも責任重大とはいえ、国政トップの大統領なら本来なら憧れる子供も多いはず。ところが、韓国では“一番就きたくない職業”になっているというのだ。
「それは大統領経験者の多くが退任後、ことごとく不幸に見舞われているからです」（元ソウル支局駐在記者）
韓国大統領の悲惨な末路についてはよく言われるが、歴史を紐解くと本当にひどい。ちなみに尹錫悦氏を除く歴代19代12人の大統領のうち、李明博氏（16代）や朴槿恵氏（17代）など逮捕されたのが半分の6名。なかでも全斗煥氏（11〜12代）は後に恩赦となったが死刑判決を受けている。
他にも李承晩氏（1〜3代）はクーデターで失脚し、李氏は米国に亡命。朴正煕氏（5〜9代）は在任中に暗殺され、盧武鉉氏（16代）は収賄疑惑の捜査中に自死。北朝鮮との融和政策を進め、ノーベル平和賞を受賞した金大中氏（15代）も退任後に3人の子供が次々と逮捕されている。
「唯一、難を逃れたのは崔圭夏氏（10代）くらい。戦後の総理経験者のうち、逮捕されたのが田中角栄だけの日本とは大違いです。韓国大統領がここまで不幸な末路を辿る要因として昔は政情不安が大きな要因でしたが、同様に“帝王的”と呼ばれるほど大統領に強い権限が集中する政治体制もその背景にあります。就任すればそこに群がる輩もいて、容易に富を手にできることも問題視されています」（同）
そうした古い政治システムを変えようとする声は挙がっているが、改革の実施には至っていないのが現状だ。
おまけに先の選挙戦では両陣営、スキャンダルの暴露合戦の様相を呈し、「史上最低の大統領選」との評価も聞かれた。文在寅大統領も退任後に不正疑惑にメスが入るとも言われ、これでは若者が最も就きたくない職業と言われるのも仕方ないだろう。
尹新大統領は任期が始まったばかりだが、退任後に平穏な日々を送れるか、いまから心配になってくる。
