プーチンと習近平「悪夢の合体」野望【4】米中が原子力潜水艦で一触即発

 米国が中国を牽制していたことは、昨年10月にも露呈している。米海軍の原子力潜水艦「コネティカット」が南シナ海の航海で潜航中、「未知の海山」に衝突する事故が発生した。

「放射能漏れの危険性があったにもかかわらず、米国は原潜の航行の意図を説明していません。中国の軍事専門家は『高い頻度で接近し、スパイ行為を遂行していた』と警鐘を鳴らし、米国の隠密行動に警戒レベルを上げたとも言われています」(外信部記者)

 予期せぬ事故でバレた形になったが、武力誇示としての威力はあったようだ。

 今回のロシアのウクライナ侵攻でも、覇権を狙う中国に想定外の事態が起きている。一つ目は、欧米諸国の経済制裁である。3月13日の段階で、ロシアのシルアノフ財務相は保有する金と外貨準備のうち約3000億ドル(約35兆2000億円)相当が凍結されたことを明かした。潮氏が中国の立場をこう語る。

「1カ月以上、ロシアが被るダメージを横で見てきました。全面的に支援すればSWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除や中央銀行の資産凍結という同じ目に遭うと見られ、タカをくくっている場合ではないと気づいたのでしょう」

 想定外の二つ目は、ロシア軍の弱さだ。4月7日、ロシアのペスコフ報道官はスカイニュースのインタビューで、「かなりの兵力を失った」と答え、窮地に追い込まれた様子が窺える。

「投入されたロシア軍は戦力の1〜3割が無力化されたという話も出ています。それぐらい大したことはないと思われますが、100円の商品を1割引きで販売するのとは、意味合いが違う。例えば、軍事演習でAチームとBチームが争い、Bチームの兵力が50%減になったら、交戦能力なしと判定され、そこで終了。つまり、3割が無力化されたとなれば、陸上兵力においては相当高い損耗率になるのです」(潮氏)

 ロシアが中国に軍事要請をしたと報じられているが、いくら「友情に限界はない」とアピールしても、国益を考えた場合、二の足を踏むのも仕方あるまい。一方、ロシアが弱体化すれば反米同盟としては痛手で、「解体」は避けたいところ。そんな板挟みの状況下でも、中国は野望実現のために虎視眈々と戦略を練っていた。

「ロシアのウクライナ侵攻前に中国側がサイバー攻撃を仕掛けたのも、ロシアを味方する意味とは別の思惑もあったと思います。もともと中国のサイバー部隊は大規模な破壊工作を実施したケースは少なく、機密情報を盗んだり監視活動が主な目的。ウクライナの後ろ盾になったアメリカやイギリスがどんな戦略でロシアを窮地に追い込んでいるのか、常に動向を監視しているはず。すでに中国は台湾有事を見据え、独自の国際決済システムで金融インフラを整えたり、情報戦で主導権を握られないために、アメリカ企業のプラットフォームのツイッターやフェイスブックを禁じ、中国企業のウェイボーを活用するなど、SNS戦略を練っています」(山田氏)

 このままプーチン大統領が「完全撤退」するとも思えず、習主席と何を目論んでいるのか。日本も対岸の火事と油断している場合ではなさそうだ。

*「週刊アサヒ芸能」4月21日号より

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