「うどん県」×「うどん共和国」“うどん世界一”争いの最前線

 香川県が「うどん県」を名乗り始めたのが2011年のこと。「讃岐うどん」が独特のコシのあるうどんで他に比類がなく、これを香川県民が県民食として愛する文化があることついては、日本人なら誰も疑問を差し挟まないはずだ。ところが、もし香川県がうどんの「王様県」であるかのように振る舞うのならば、これを面白く思わない県があるようだ。それは埼玉県だ。

「埼玉県ではこのほど、20種類ものうどんを紹介するフリーペーパーを3月29日に発行しました。題して『うどん共和国さいたま』です。発行したのは埼玉県産業労働部観光課です。ブランドでは到底、讃岐うどんには勝てないとあってか、こちらは20種類という数で勝負。だから『共和国』というわけです。監修は、埼玉を日本一の『うどん県』にする会会長で、東京大学うどん部の名誉顧問を務める人物が行っています」(フードライター)

 紹介されているのは加須市の「加須うどん」や熊谷市の「熊谷うどん」など。羽生市の「1本うどん」や鴻巣市の「川幅うどん」になると、前者は直径2.5センチほどのゴン太の1本麺、後者は幅が5センチ以上もある布のようなダイナミックな麺と、見た目のインパクトは抜群。1回は試してみたくなる。

 その他、埼玉の西部に広く分布する「武蔵野うどん」は、東京の武蔵野地帯でも名店が多くあったりと、このところ人気ブランド化しつつある。確かにこう見ると、かなりのうどん文化ぶりが伺える。

「フリーペーパーでも紹介されていますが、埼玉県は経産省の2020年の統計で、うどんやそば、そうめんを含む『和風めん』出荷量で2位の兵庫県、3位の香川県をブッチ切りで引き離してのダントツ1位なのです。他にもうどんが有名な県としては3大うどんの稲庭の秋田県、水沢の群馬県、うどんが庶民文化として根付いている福岡県などがありますが、“うどんのみ”ならば数字が古くなりますが、09年の生産量ランキングでは1位が香川県に2位の埼玉県が肉薄しています」(同)

 有名なうどんチェーン店で考えてみても、はなまると丸亀の2大巨頭はともかくとして、埼玉県を中心に近県を含めて約160店舗を展開する「山田うどん」があって、これを含めて3大うどんチェーンと称することもある。

 フリーペーパーのサブタイトルには、「もうひとつのうどん県」との記述もあって、やはり対抗意識の高さが窺える。たぶん、香川県民は歯牙にもかけないのだろうけれど。

(猫間滋)

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