「ロシアに対する圧力をかけ始めたのは日本です。引き続き、その継続をお願いします」
23日、日本の国会でのオンライン演説で、ウクライナへのさらなる協力を呼びかけたゼレンスキー大統領。米国では「真珠湾攻撃」、ドイツでは「ベルリンの壁」、今回の日本では「原発」「サリン」「津波」「復興」といったワードを盛り込み「ウクライナに対する侵略の『津波』を止めるために、ロシアとの貿易禁止の導入をお願いします」と制裁を訴えた。
ところがそんな中、軍事作戦が膠着するウクライナに、拷問や暗殺を繰り返してきた残虐なプーチン大統領の“親衛隊”が送り込まれたことが、ロイターほか複数のメディアで報じられ波紋を広げている。
「その勢力というのが“チェチェンの独裁者”と言われるカディロフ首長と、その私兵であるカディロフツィという部隊。かつてチェチェン共和国には、イスラム系の大統領がいて、ロシアからの分離独立を求めていましたが、軍隊を率いこれを制圧。現在、傀儡政権である行政のトップという地位に就くのが、このカディロフという人物なんです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
しかも、このカディロフ氏とその私兵・カディロフツィは、チェチェンの統治だけにとどまらず、2006年のロシア人スパイ・リトビネンコ毒殺事件をはじめ、プーチン批判で知られた女性ジャーナリストの銃殺事件などでもその存在が囁かれ、旧KGBの工作員でも手に負えないような数々の“汚れ仕事”を委託され完璧に実行する、いわば「必殺仕置き人」のような存在だという。
「カディロフツィの数は現在2万人で、目的達成のためには手段を選ばないと言われています。特に、拷問は極めて残忍で、指を折る、生爪をはがす、歯を抜くなど序の口。ただ、このあまり表に出ない“残虐部隊”をウクライナ入りさせたということに、膠着状態の中でのプーチンの焦りが感じられます」(同)
ウクライナにはゼレンスキー大統領の呼び掛けに対し、現在52カ国から2万人を超える義勇兵の応募があり、外国人部隊が次々に編成されている。
「ウクライナ義勇兵募集には70人の日本人が名乗りを上げ、慌てた政府が渡航自粛を呼び掛けましたが、それでも制止を振り切ってウクライナに渡り、前線で戦っている日本人もいます。そんな彼らがカディロフツィに拘束された場合、どんな拷問が待ち受けているのか。国際法の下、兵士が負傷したり捕虜にされるなどして戦闘外に置かれたときには、報復や拷問、屈辱的な扱いから保護されるはずですが、相手が相手だけに人道的な扱いを受ける保証は一切ないと思ったほうがいいでしょう」(同)
オンライン演説の最後、日本語で「ありがとう」と述べ、「ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ」と言葉を締めくくったゼレンスキー大統領。一日も早い停戦を祈るしかない。
(灯倫太郎)