ロシアから20万人が脱出!富裕層・知識層が続々と国外脱出するワケ

 ロシア軍の侵攻後、国民総動員令で出国が禁止されている18〜60歳の男性以外の国外への避難が続くウクライナ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のフィリッポ・グランディ氏の発表によれば、20日時点で避難民は1000万人を突破している。

 だが、その一方で侵略する側のロシアからも、富裕層を中心に国外へ脱出する人が増えている。ロシア人経済学者でシカゴ大学ハリス公共政策大学院のコンスタンチンソニン教授の推計では、侵攻開始から半月の間に20万人のロシア人が母国を離れたという。

「ロシア人富裕層は海外に資産を持つ人も多いですが、政府関係者やそれに近い人物でなければ国外口座は凍結されません。また、西側諸国以外の航空会社はロシアに就航していて出国も可能。サンクトペテルブルクからノルウェーまでは鉄道や高速バスも出ています。自国メディアがいくら情報統制してもネットで情報を得られますし、ルーブル暴落に伴う物価高騰や欧米系クレジットカードの使用停止など経済にも深刻な影響が出ているなか、お金に余裕のある人が国外に一時避難しようと考えるのは当然のことです」(国際ジャーナリスト)

 ただし、ロシア人は日本人と違ってビザを取得しなければ入国できない国が多い。旧ソ連圏の親ロシア系の国を除けば、ビザ不要なのはヨーロッパではトルコやアルメニア、ジョージアなど数える程度。他はメキシコ以外の中南米や東南アジア、イスラエルにモロッコ、南アフリカなど渡航の選択肢は限られる。

「今でもビザ取得可能な国はありますが、西側諸国の多くはロシア人のビザ発給停止措置を取っています。とはいえ、なかにはUAEやエジプト、地中海の小国キプロスのように空港到着時にビザを発行してもらえる国もあり、これらの国にはトルコやアルメニア、タイなどと並んでロシア人富裕層の入国が増えているそうです」(同)

 しかも、今後の状況次第では一時的な滞在ではなく移住を決断する人も増えるだろう。

「特にロシアでは富裕層以外にも、研究者などの知識層や才能ある人材の漏出も懸念されています。そうなれば国は弱体化の一途を辿ることになるでしょうね」(同)

 長期的に見れば、追い詰められているのはむしろウクライナより、ロシアなのかもしれない。

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