「バースデー登板」に復活の糸口が見つかった。
6月6日は、斎藤佑樹の誕生日。同日の巨人二軍との一戦で2番手として7回のマウンドに登った斎藤は、2回を投げて無失点。4安打を浴びたが、走者を背負った場面でも慌てることがなかった。
「セットポジションになってから上手さが出る、斎藤らしい久々の好投を見せてくれました。ボールを長く持ったり、牽制球を挟むなどして間合いを変え、相手バッターの打ち気をそらしていました。持ち味が十分に出ていたと思います」(球界関係者)
試合は味方打線が終盤に爆発し、勝利投手になった。31歳、二軍。決して喜べないが、このバースデー・ピッチングに、斎藤を蘇生させる最後の方法が隠されていた。
それは、日本ハム二軍のスケジュールにあった。斎藤が登板する2日前、日本ハム二軍は、野球メディアの注目を集めていた。吉田輝星である。「一軍昇格を前提としたテスト登板」と目され、全国放送のテレビ局もカメラをまわしていた。記者も大勢いた。
「斎藤はその記者のそばを素通りしていました。そういえば、大谷翔平が入団した13年春季キャンプも、そんな光景が見られました」(取材記者)
また、少し前には清宮の実戦復帰もあった。ここ暫く、日本ハム二軍は一軍本隊よりも注目されていたわけだが、カメラが斎藤に向けられることは一度もなかった。
「6日の登板ですが、斎藤の名前がコールされた時点では1対1の同点でした」(同前)
要するに、目立たない脇役での登板だったわけだ。斎藤は他人に注目が集まり、ノーマークになったときに好投するのではないだろうか。夏の甲子園で脚光を浴びたスターとは思えない傾向だが、本当はチキンハートで、緊張感のないマウンドでなければ、長所を発揮できないのではないか。
「斎藤は内に秘めるタイプなので、報道陣が自分を素通りしていく悔しさをバネにしていくのかもしれません」(同前)
と、チキン説を否定する声もあるが、今の環境が斎藤を発奮させているのは間違いない。
ペナントレース序盤、打者一巡を目処に先発するオープナーでも結果を残せなかった。「ノーマーク・救援登板」は、最後の最後の”ハンカチ王子”再生法かもしれない。
(スポーツライター・飯山満)