10月1日午前、北海道日本ハムファイターズが斎藤佑樹投手(33)の引退を発表した。他球団でも今季限りとなったベテラン選手の引退を伝えているので、発表の時期に不自然さはないが、斎藤本人はかなり早い段階から「今季限りの引退」を決めていたようだ。
「昨季11月9日の最終戦のあと、吉村浩GMが斎藤の右肘が重傷であることを打ち明けています。靱帯損傷、吉村GMはメスを入れるのか否か、治療の方法を本人と話し合っていると言っていました」(スポーツ紙記者)
関係者によれば、その時点で斎藤のなかには「引退」の二文字もあったようだ。
「メスを入れない治療法を選択したのは、球団が『このまま引退させたらかわいそうだ』と思ったからです。ドラフト1位選手ですし、斎藤が予告先発された日の観客増など、営業面での貢献度も大きい。何よりも、ここ数年は一軍戦力になろうと必死に努力していましたから」(球界関係者)
とくに、栗山英樹監督が説得にあたったそうだ。右肩、右肘などの故障もあったとはいえ、プロ11年で通算15勝26敗、防御率4.34。キャリアハイがルーキーイヤーの6勝で、「ここ4年間勝ち星ナシ、21年は一軍登板ゼロ」はあまりにも寂しすぎる。
「他のドラフト1位選手なら、とっくにクビを切られていたでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
また、球団が斎藤に“ラストチャンス”を与えたもう一つの理由だが、将来のフロント幹部としてチームに残留してもらいたいとのプランもあったようだ。
「頭脳明晰、語り口もソフトです。メディアに対しては無愛想な態度を見せることもありますが、素の斎藤は温厚な性格で物事を客観的に見る眼も持っています」(同前)
斎藤は個人で行動することのほうが多い。成績が振るわないため、必要以上に引いてしまい、いつのまにか他選手と距離ができてしまった。不器用な一面もあるようだが、クレバーな頭脳と温厚な性格を指して、球団は良い意味で「野球選手らしくない」とも見ていたようだ。
引退後についてはまだ明かされていない。「最後の1年」を与えてくれた球団に恩返しするのか、あるいは「ビジネスの世界に転身する」「自身の故障経験を活かし、運動学を学び直す」なんて情報も聞かれた。
2023年の新球場移転を控えた日本ハムは、また1人、全国区の選手を喪失してまった。
(スポーツライター・飯山満)