ひょっとしたら、藤浪晋太郎は大きなチャンスを逃してしまったのではないだろうか。
キャンプ、オープン戦が絶好調だった阪神・藤浪が「4回5失点」と大炎上したのは、3月5日の楽天とのオープン戦だった。今季初の甲子園マウンドであり、矢野燿大監督も「後ろにファウルが飛ぶ、空振りを真っすぐで取れるとかが必要」と、投球内容にも“落第点”をつけていた。
「あと1回か2回、登板のチャンスはもらえるはず。エース・西勇輝の調子が上がってきませんし、高橋遥人の復帰は交流戦以降になりそう。先発ローテーション入りのチャンスはまだあります」(在阪記者)
復活を信じたいが、この日の背信登板で失ったのは、ローテーション入りのチャンスだけではなかったようだ。同じ3月5日の他球場の先発投手を見ると、その答えがわかる。
同日、6試合が行われたが、巨人は菅野智之、中日は大野雄大、広島は大瀬良大地が先発している。この3投手はすでに「開幕投手」として発表されている。また、未発表のチームでも、オリックスは山本由伸が先発し、日本ハムでは上沢直之が2番手で登板していた。
短いイニングしか投げていないとはいえ、3人の開幕投手が出揃ったということは、3月5日は25日から逆算して調整するのに適していたのだろう。
つまり、阪神・矢野燿大監督は「2年連続開幕投手」の期待も込めて、藤浪を先発マウンドに送ったのではないだろうか。
「阪神の開幕投手は、昨季、最多勝と最高勝率の2冠に輝いた青柳晃洋が有力視されています。ただし、5日の乱調がなければ、好調を維持していた藤浪が2年連続で大役を務める可能性もなくはなかった。『青柳ではないとすれば、藤浪だろう』と予想する声も出ていました」(前出・在阪記者)
矢野監督はキャンプ前日のミーティングで「今季限りで退任する」とナインに向かって公表したが、「やりたいようにやらせてもらう」とも言ったそうだ。“やりたいように”藤浪を大舞台に送り出すのか、それとも最多勝投手・青柳で堅実に勝ちにいくのか。藤浪の背信投球が矢野監督の指揮官としての運命にも影響してきそうだ。
(スポーツライター・飯山満)