22年も希望退職ラッシュ! 大手企業が「黒字リストラ」に踏み切る理由とは?

 フジテレビ、ホンダ、JT、パナソニック。これら誰もが知る有名企業に共通することがある。ここ最近で早期・希望退職を募集したということだ。しかも大量に。1000人以上の規模になったのがJTの2950人、ホンダ約2000人、KNT‐CTホールディングス(近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合)1376人、LIXIL1200人、パナソニックが約1000人だ。会社の規模が大きいだけに、これら企業がリストラに乗り出すとその人数も自然と多くなる。

「フジテレビの希望退職は対象が勤続10年以上の50歳以上で、約1300人いる社員のうち該当者はおよそ250人ほど。方針を打ち出したのは11月末で、実際の募集は1月5日〜2月10日ですが(退職は3月31日)、発表直後に100人近い問い合わせがあったといいます。フジテレビでは17年にも希望退職の募集をしましたが、50歳以上で退職金と特別優遇加算金で1億円近い金額がもらえるにもかかわらず、応募したのはわずかヒト桁。グループ全体のフジ・メディア・ホールディングスで言えば、今や稼ぎ頭は不動産収入で、社員の平均給与が高いテレビはもはや重荷。そこで、コロナ禍で不動産収入が減ったことから再びテレビのリストラに着手したということでしょう」(経済ジャーナリスト)

 フジテレビの例に漏れず、希望退職を募集する企業数が減らない状況になっている。20年に募集した上場企業は93社で、21年は10月までの段階で72社に及ぶ。その前の19年は、会社が黒字であるにもかかわらず余裕があるうちに人員整理をしておこうというリストラが目立ち、「黒字リストラ」という言葉がよく使われた。今回も、もともと人員がダブついていて整理の必要が内在していたところに、コロナ禍がさらに追い打ちをかけたといったところだろう。

 22年に希望退職を募集する企業はすでに6社ある。上記のフジテレビのほか、博報堂、シャルレ、ダイドーリミテッドといった有名企業も含まれる。今後、オミクロン株が拡大すれば悪影響が直撃する企業は経営環境が厳しくなるだろうし、そもそもコロナ禍が収まったとしても、サプライチェーンの見直しや原油高、半導体不足、ニューノーマルによる消費動向の変化…などで経営資源の配分をドラスティックに見直すことは必須で、不要な社員の整理は不可避。となれば、今年も希望退職を募集する企業数は高いレベルで推移するだろう。

「会社が行き詰まった場合の解決策として早いのは、社員のクビを切るか保有する不動産を売却するか。コロナ禍では電通やエイベックスが本社ビルを売却して話題になりました。ですが今回、大量の希望退職を募ったLIXILやJTは本社ビルをすでに売却済み。つまり、不動産を処分しても足りない分は人に手を付けるということ。このように、本社ビルを売却した企業が22年に早期退職の募集をかける可能性は高いでしょう」(同)

 アベノミクスが終了して、結局はトリクルダウンが起こらずに日本人の給与は低迷を続け、そこに「新たな資本主義」を提唱する岸田政権は「分配」を強調する。でも、仕事が無くなったんじゃ分配もクソもない。失われた30年の回復にはもう少し我慢が必要なようだ。

(猫間滋)

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