開局66年目にして最大の窮地に見舞われているフジテレビ。しかし、振り返れば82年から93年まで12年連続で視聴率3冠を達成するなど、黄金時代を謳歌していたことも。 コラムニストの石原壮一郎氏が述懐する。
「81年に生み出されたキャッチコピー『楽しくなければテレビじゃない』が、当時の『日本の雰囲気』を作ったと思うんです。『面白さ至上主義』をフジテレビが提唱して、これを世の中が『面白くなければ人生じゃない』と納得して受け入れられたのでしょう」
82年10月に放送がスタートした「笑っていいとも!」がフジの「面白さ至上主義」を象徴しているという。
「人生にツラいことがあっても、気に入らないことがあっても、嫌なヤツがいても、笑っちゃっていいんだと『生きる指標』を与えてくれたのが『笑っていいとも!』。当時はバブルに向かって経済が豊かになりだした時代。戦後の混乱からなりふり構わず働いた後、やっといろんなものを楽しめるようになった。『いかに楽しく生きていくか』がテーマとなった時期です」(石原氏)
プロデューサーは、80年に42歳で編成局長となった日枝氏が築き上げた「フジテレビ黄金時代」を懐かしむ。
「『オレたちひょうきん族』や『オールナイトフジ』『志村けんのバカ殿様』『夕やけニャンニャン』『カノッサの屈辱』など、テレビ史でも最も贅沢なラインナップでしたよ。でも、そのイケイケだった時代から続く〝悪しき業界ノリ〟の残滓への反発で、今の逆風状態に陥っているではないか」
これに対し、石原氏は今回の凋落の背景に、組織のある変化を見て取る。
「かつてのフジテレビは『安定路線を狙っていても仕方ない』というはみ出し者的な人が多かったと思いますが、うまくいったことで、いつの間にか『エラいテレビ局』になってしまった。そうなると入社してくるのは賢くてソツのない人ばかり。その人たちに面白路線をやれというのも難しい。会社としても冒険ができなくなっていったのでしょうね」
その上で、崖っぷちのフジの復権に必要なものを改めて訴える。
「まずは過去の栄光を捨てることでしょう。今や失うものは何もありません。みんな怒ってばかりの時代に一石を投じるべく、『笑っていいとも!』ではなく『怒っていいとも!』を今こそスタートさせるべきでしょう」(石原氏)
やっぱりフジが好き、と視聴者が振り向く日がきっと来るハズだ‥‥。
*週刊アサヒ芸能4月10日号掲載