ロシアがウクライナ国境付近で兵力を増加、ウクライナはもちろん侵攻に備えてこれに対峙して緊張感が高まっている。ウクライナの分析によれば、ロシアが増強した兵力は12万人で、さらにアメリカの見方では17万5000人が投入される可能性があるとしている。
「両国は14年にロシアがウクライナ南部のクリミア自治共和国に侵攻するという騒乱があった因縁を持つ者同士です。クリミアはウクライナの南部にあって黒海に突き出た形で位置し、さらには地中海にもつながるので、歴史的にも軍事的な要衝としてあり続けてきました。だから国際社会の反発を招きつつもロシアはクリミアにこだわったんです」(週刊誌記者)
だから、ウクライナの国防相が12月6日にメディアのインタビューに答えた際の口ぶりは荒い。もし侵攻に踏み切ることになればそれはロシアにとって「血まみれの虐殺」になるとして、ロシア人は「ひつぎで帰国することになる」とまで言い放った。
すわ戦争勃発か!という事態で発言に容赦はないのだが、そもそもどうしてこうした事態になったのか。
「それはウクライナがロシアの下から離れて西側諸国入りしたいからです。14年はウクライナがEU(欧州連合)との提携を強化し、今回はNATO(北大西洋条約機構)入りを希望していた。ウクライナはソ連崩壊と共に独立した国ですが、もともとはロシアと協調的でした。それが距離を置きつつあって、しかも西側陣営の軍事同盟に入りたいというのですから、ロシアとしても気が気ではないわけです」(同)
もちろん地政学的に大きな現状変更はアメリカを代表とした国際社会が許さないところ。戦争入りを回避するためにアメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領は12月7日にオンラインで首脳会談を行った。そこではバイデンは軍の投入は回避しつつも、経済制裁などは行うとして警告を発した。
さてそんなバイデン大統領は12月9、10日に世界の110の国・地域の政府代表者や市民グループ、ジャーナリストらがオンラインで会する「民主主義サミット」なるものを行ったが、これを中国とロシアが「偽善」と批判している。共に台湾とウクライナで現状変更を行いたい両国が手を組んでアメリカを牽制し、北京五輪の外交的ボイコット問題も絡まって世界情勢はますます厄介な事態となっている。
(猫間滋)