ドイツ外相が北京五輪“不参加”の可能性を示唆!ボイコット・ドミノはあるか

 中国の女子テニス選手・彭帥が性的関係の強要を告発後いまだ姿を見せない問題に対し、女子テニスツアーを統括するWTAが「中国撤退」を表明、その決断に世界から賛辞があがった。対して、北京冬季五輪を何がなんでも開催したいIOCは、バッハ会長自らが彭帥と会話したとする画像をアップ、火消しに懸命だ。

 そんな中CNNが6日、複数の情報筋の談話として、米国のバイデン政権が週内にも北京冬季五輪への政府使節団の派遣を見送る「外交ボイコット」を発表する可能性があると報じ、IOC関係者の間に波紋が広がっている。

 バイデン大統領は先月、記者団に対し、外交ボイコットを検討していると明らかにしていたが、記事によれば《米国は外交ボイコットの動きによって、米国選手の大会参加を妨げることなく、国際的な舞台で中国に対して抗議のメッセージを送ることができるようになる》として、《米国家安全保障会議(NSC)からコメントは得られなかった》ものの《NSCは外交ボイコットについて非公開で協議を行っている》のだという。

 とはいえ、政治ジャーナリストによれば、「米国による外交ボイコットはいわば想定内だったはず」だという。

「北京冬季五輪については、早い段階でリトアニアが外交ボイコットを表明。同盟国の英国もボイコットを検討中と表明していたことで、米国では与野党議員から支持する声が出ていたため、外交ボイコットを実施する可能性は以前から高かった。それより問題なのが、メルケル政権時代は中国べったりだったドイツ。ドイツでは今月8日、3党連立政権が発足しますが、早くから中国の人権侵害を看過しない方針を打ち出しています。当然、ドイツの決断がEU諸国へ与える影響は大きいはず」

 欧州の多くの国が中国に懸念を強める中でも、メルケル氏は変わらず中国を最大の貿易相手国と位置づけて関係を重視してきた。16年間の任期中、訪中は12回。昨年末には欧州連合(EU)と中国の投資協定を後押ししたのも、メルケル氏だった(今年5月に批准凍結)。

「メルケル氏としては、中国と経済関係を深めることで、欧州が求める国際秩序に中国が適合していくことを期待していたようですが、結局、南シナ海での軍事的な海洋進出や、新疆ウイグル自治区、香港での人権問題などが次々発生。中国の本質は変わることがなく、メルケル氏は内外から非難を浴びることになってしまいました」(同)

 今後のドイツは、中道左派の社会民主党(SPD)、環境政党の緑の党、中道リベラルの自由民主党(FDP)の3党の連立政権となるが、人権問題に敏感なSPDと緑の党は中国に批判的で、次期政権は中国に厳しくなるだろうとの見方が強い。

「ドイツと友好関係にある台湾の『自由時報』は、すでに『緑の党党首で外相となるアンナレーナ・ベアボック氏が中国に対して強い姿勢を示し、北京五輪のボイコットも除外しないと語った』と報道しています。それが事実なら、外交的ボイコットでは済まず、選手団派遣ボイコットの可能性もあり、そうなればEUから追随する国が現れることも考えられます。ドイツの決定いかんではボイコット・ドミノが起こるかもしれません」(同)

 中国人女子テニス選手の告白に端を発した騒動は、もはや“ボッタクリ男爵”でも火消しが出来ないところまできているようだ。

(灯倫太郎)

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