台湾周辺での大規模軍事演習により西側諸国との緊張感を増す中国で、各国大使が立て続けに死亡するという異例の事態が生じている。
1人目は昨年9月6日に急死したドイツのヤン・ヘッカー大使で、着任からわずか2週間で死去。まだ54歳という若さだった。同大使はメルケル前首相の外交アドバイザーを務めていた側近だ。
2人目が今年2月14日に北京五輪関連行事に出席した直後に倒れたウクライナのセルゲイ・カミシェフ大使。
さらに、今年4月21日にはフィリピンのロマーナ大使が外相会談に同行するために訪れた安徽省黄山で死去。当時、中国では新型コロナ対策として国内移動にも一定期間の隔離措置を設けており、その間の出来事だったが感染はなかったとされている。
そして4人目が、今月7日に公務で雲南省昆明を訪問中に急死したミャンマーのミョー・タント・ペ大使。死因は急性心不全と報じられている。
海外メディアは各国大使の連続死をセンセーショナルに報じたが、一方、中国国内ではほとんど話題になっていない。そのため、ネット上では根も葉もない謀殺説すら飛び交っている状況だ。
「さすがそれはないでしょう。確かに中国では、観光客や企業の駐在員が逮捕・勾留される事例はありますが、外交官を殺害する理由はまったく見当たりません。ドイツとは西側諸国の中では比較的良好な関係でしたし、ウクライナやフィリピンとも悪くない。ミャンマーに至っては衛星国も同然の友好国です」(全国紙記者)
あくまで今回は、不幸が偶然に重なったということのようだ。
「外交官の仕事はかなり激務で、定時で終了というわけにないきません。パーティーやレセプションにしょっちゅう呼ばれますし、国会議員が視察などに訪れる時には、準備やアテンドに追われることになる。自国民が事故や災害に巻き込まれれば、大使館に泊まり込んで対応しなければなりません。自国と時差のある赴任地では、日常の会議さえ時間外勤務です。しかも大使ともなれば、国を代表しているという、肩にかかる重責は計り知れない。あまりの過酷さゆえに任期中に身体を壊したり、客死する外交官は少なくないんです」(同)
労働環境が要因のひとつだとすれば、謀殺説以上に厄介な問題なのかもしれない。