原監督が進める「50番トリオ」帰還と“第2の満塁男”の育成

 原巨人が来季のコーチスタッフ人事を発表した。阿部慎之助、村田修一、実松一成、山口鉄也、亀井善行など若い指導者が「一軍担当」となり、また、元木大介ヘッドコーチがオフェンスチーフ、阿部作戦コーチがディフェンス担当を兼務するなど、役割を明確化した点が注目されているが、他球団OBを含めたプロ野球解説者、関係者たちは「三軍監督」に注目していた。旧ベイスターズで現役を引退した駒田徳広氏が巨人に復帰したからだ。

「原辰徳監督の意向で決まったと見て間違いありません。駒田氏はこれまで臨時コーチとして巨人選手を指導したことはありましたが、正式な巨人コーチ就任は初めて」(ベテラン記者)

 駒田氏は楽天の打撃コーチ、独立リーグ・高知の監督など、引退後も後進の指導にあたってきた。だが、正式に古巣巨人のユニフォームを着るのは、フリーエージェント権を行使した1993年以来となる。古巣復帰は、遅すぎたくらいである。

「FAで他球団に移籍したので、当時を知る巨人関係者は抵抗があったみたいです。原監督は過去政権でも、何度か駒田氏、槙原寛己氏を呼び戻そうとしていました」(球界関係者)

 槙原氏はFA権を行使していないが、長嶋茂雄監督(当時)が自ら慰留に乗り出す“騒動”があった。巨人で現役生活を終えたものの、こちらも駒田氏同様、引退後は古巣との“距離”ができてしまった。

「来季からフロント入りする吉村禎章氏、駒田氏、槙原氏の3人は、50番トリオと呼ばれていました。原監督から見て、年齢的には弟分。チームへの貢献度を含め、彼らを帰還させるべきとずっと主張してきました」(同前)

 今回は駒田氏だけとなったが、原監督の引退後に距離のできてしまったOBを呼び戻すチーム改革であろう。

「駒田氏の古巣帰還を喜ぶ声も多く聞かれました。でも、駒田氏は慎重で、かつ大きな責任感も感じていました。他の巨人OBや知人が祝福の連絡を入れても、『まだ何も言えないので』と返していました。正式発表後も、です。原監督が呼び戻してくれたことに報いたいとの気持ちは繰り返し、話していましたが」(同前)

 独立リーグの監督経験は、支配下登録を目指す選手たちを指導するうえで大いに役立つはず。技術的には未熟でも熱い情熱を持っている、そんな若手をどう導き、自信を持たせてやるかを体験してきた。

 そういえば、駒田氏は現役時代「満塁男」とも呼ばれていた。プレッシャーに負けない強い精神力があってこその実績だ。今季の敗因は、打線の低迷。原監督の狙いは「ここで打ってほしい」の期待に応えられる“第2の満塁男”を育てることかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

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