新型コロナへの無為無策で吊るし上げられた菅義偉総理がついに辞任。この政変劇でドタバタ総裁選は大混戦になりそうだが、水面下では安倍晋三前総理が動き出していた。秋の衆院選で自民党への大逆風が予想される中、カリスマ弁護士との「合体プラン」を画策、過半数キープの先に見えてきた野望とは。
「総裁選には出馬しない」
9月3日午前に開かれた自民党役員会で、窮地に追い込まれていた菅義偉総理(72)は9月末で退任する意向を示した。
党内から「菅総理では衆院選を戦えない」とハシゴを外される大きなきっかけとなったのは、9月1日の朝、総理官邸で開いた囲み会見だった。
「最優先は新型コロナウイルス対策だ。今のような厳しい状況では、解散できる状況ではない」
記者団から解散を問われた菅総理は、怒気を含ませてこう答えると、自民党総裁選(17日告示・29日投開票)にも触れ、
「先送りは考えていない」
こう、きっぱりと明言した。この囲み会見を、全国紙政治部記者は呆れた口調でこう振り返る。
「8月31日の午後になって『9月中旬の衆院解散を検討、党総裁選は先送りの意向』という情報が永田町を駆け巡ったんです。各社、特オチを避けるために裏取りし、朝刊に間に合わなければウェブ版で早朝に配信しました。ここだけの話、発信元は菅総理周辺から。観測気球を上げて党内や世論の反応を見る狙いがあったのですが、予想以上に党内から批判が噴出。慌てた菅総理はすぐさま否定して、ちゃぶ台をひっくり返したのです」
だが、時すでに遅し。この時点で「菅総理は不出馬もある」と党内で囁かれるほど、求心力は急落していた。
一方、勢いをつけていたのは、菅総理の対抗馬に名乗りを上げた岸田文雄前政調会長(64)。8月26日の出馬表明会見で、
「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで」
と改革案をぶち上げて、5年にわたり在職した二階俊博幹事長(82)に引導を渡そうと動いたのだ。
「岸田発言で決断を迫られたのは、菅総理。このままでは二階幹事長の続投か否かが総裁選の争点になりうると判断し、〝二階切り〟を即断しました」(政治部記者)
それでも菅政権発足時から続く、菅─二階のラインはこの段階でまだ終焉を迎えたわけではなかった。政治部記者が続ける。
「30日に菅総理から官邸で『人事を刷新したい』と相談された二階氏は、ポストを退く代わりに内閣改造・党役員人事で二階派のメンバーを入れてほしいと持ちかけたそうです。一方で岸田氏にケンカを売られた怒りは収まっておらず、『ひねり潰してやる』とオフレコで記者団に凄い剣幕を見せ、あらゆる手を使ってでも当選阻止に打って出ようとしていた」
それも想定内で宣戦布告した岸田氏が援護射撃を求めたのは、安倍晋三前総理(66)と麻生太郎副総理兼財務相(80)だった。
「昨年の総裁選で大差で敗北した岸田氏はそれ以降、安倍・麻生氏に接近して距離を縮めてきました。今回の出馬表明前の24日に麻生氏と都内で会談、翌日は岸田氏の派閥幹部が安倍氏と面会して挨拶回りを済ませると、30日にも両氏と個別に会談し、支援を要請したのです」(自民党関係者)
こうした岸田氏の思惑とは裏腹に、菅総理の退陣発表で急転。菅─二階のラインが事実上消滅し、総裁選、秋の衆院選は安倍氏がキャスティングボートを握ることになる‥‥。
*「週刊アサヒ芸能」9月16日号より。(2)につづく