「平和の祭典を機に日韓関係を正常に」
そんな周囲の期待がもろくも崩れたのが7月19日のこと。東京五輪の開催に合わせて韓国の文在寅大統領が来日、菅義偉首相との首脳会談を行って、「過去最悪」と言われる現在の日韓関係を何とか改善しようと水面下で働きかけが行われていたのだが、話し合いはまとまらず、文大統領の来日は見送られた。
「外交筋によれば、まずは対話の実現をさせたい日本側と具体的実績を求めた韓国側で温度差があったとされています。ただ、その直前の日、在韓日本大使館の公使が韓国メディア関係者に文大統領の外交姿勢を、自涜行為という意味の性的な表現を使って皮肉ったことが伝わり韓国サイドが反発。国内の支持率も最悪で是が非でも関係を修復したいのが韓国政府の本音ですが、かといって屈辱的な姿勢では国内世論も収まらないとあって、結果の見送りということでしょう」(全国紙記者)
とまあ、五輪の開幕を前にして既に外交の場ではそんな“日韓戦”が繰り広げられていたのだが、スポーツの国際大会の場では韓国選手がマウンドに国旗の太極旗を掲げたワールド・ベースボール・クラシックしかり、ナショナリズムを巡って様々な日韓トラブルが持ち上がるのも、もはや恒例。そして現場である選手村では、またしてもそんな余計なつばぜり合いが行われていた。
「14日のことです。選手村の韓国選手団の宿泊先にある垂れ幕が掲げられたのですが、それがなんと『臣にはまだ5000万の国民の応援と支持が残っています』と書かれていた。これは豊臣秀吉が晩年に韓国出征を行った時に、迎え撃った韓国軍の将軍が遺した言葉をもじったもので、誰がどう見てもスポーツの場に政治の、しかも過去の因縁を含んだナショナリズムを持ち込んだかたちです」(前出・記者)
これを受け、IOCは撤去を要請。韓国側は「それならば」と日本に対し旭日旗の持ち込みを禁止すべきとまたいつもの平行線的な主張を繰り広げたが、それでも要請は受け入れ、代わりに朝鮮半島の形を模した虎の垂れ幕に変えた。こういった韓国の姿勢に、旭日旗を掲げた政治団体が韓国選手村付近で詰め寄る場面もあった。
ナショナリズムを巡る日韓戦はもっと以前から始まっていて、5月には韓国の大学教授が東京五輪のHPで竹島、つまりは韓国で言う独島が日本の領土であるかのように表示されている地図が掲載されているとして、やはりIOCへの抗議が行われていたり、もっと前の19年には、パラリンピックのメダルが旭日旗のデザインに似ているといったイチャモンが持ち上がるということさえあった。
コロナの感染拡大や直前になっての小山田圭吾問題など、様々なトラブルで異例ずくめの今回の五輪開催。そこに日韓関係の冷え切ったマインドも加わるので、こちらの方でも何が起こるやら分からないかもしれない。
(猫間滋)