来日しているスタッフの中には観光気分の人もいるようだが、驚くことに外出する選手の目撃情報もあった。選手村の警備を担当する警察官が耳打ちする。
「周囲の警備にあたる警察官は全国から派遣されてきて、開会式後にはもっと増える予定です。そんな状況を知ってか知らずか、徒歩でコンビニに行ったり、タクシーで出て行く選手を見かけますよ」
ほとんどの選手は練習や競技以外での外出禁止令を守っているが、こっそり選手村を抜け出す選手もいるのが現状だ。付近にいたタクシー運転手が証言する。
「ここ1カ月で外国人のお客様は非常に増えましたね。選手村や大会関係者が宿泊するホテル付近は五輪のTシャツを着ていたり、IDを下げたままの人もいるので、すぐにわかりますよ」
一部の例外を除き、専用車での移動が義務づけられているが、現実の五輪宿舎は外出し放題の治外法権のようだ。
取材中にも続々と五輪関係者を乗せたバスが選手村に入っていく。交通整理をしている警備員に話を聞くと、こう説明してくれた。
「入り口は2カ所あって、車やタクシー用とバスなどの大型車用です。2カ所とも、中に入るには、検問を通らなければなりません」
検問には自衛隊員が配置されているという。
44ヘクタールの広大な敷地は周りが全て白いフェンスで囲まれている。しばらく歩けばフェンス越しに選手村を撮影する見物客の姿がチラホラ。さらに歩を進めると、
「この先行き止まりです。通り抜けはできないので注意してください」
と、ボランティアスタッフに声をかけられた。
外部との接触を断ち「孤島」と化した選手村で、なぜ連日のように新規感染者が報道されるのだろうか。
「普段はイベントスタッフをやっていて、東海地方から出張で来ています。働く条件が2回のワクチン接種と犯罪歴がないことで、それをクリアした人だけが働けます。しかし、選手村の食堂にいるボランティアはワクチンを1回しか接種していないそうで、ズサンな管理体制を痛感しました」(選手村で働くスタッフ)
五輪戦士の休息の場がコロナ陽性者で溢れないことを祈る。
*「週刊アサヒ芸能」8月5日号より