藤井二冠の王位防衛の前にスクッと仁王立ちする豊島竜王は12歳年上だ。しかし、2人はかなり似た経歴の持ち主だという。
「将棋を習い始めた年齢は藤井王位の5歳に対し、豊島竜王は4歳。奨励会入りも藤井王位の小学校4年生に対し、豊島竜王は3年生と先んじている。20歳で王将戦の初タイトルに挑戦すると、28歳で棋聖のタイトルを戴冠。同年に王位を獲得して二冠となった。さらに、翌19年には竜王、名人という2大タイトルを奪取。過去の『竜王・名人』は羽生九段、谷川浩司九段(59)、森内俊之九段(50)というレジェンド3人だけだったから、一気に〝豊島時代〟の到来を予感させました。また、将棋ソフトを使った〝AI将棋〟による将棋研究を棋界でもいち早く取り入れた。13年からは研究会など棋士との対人の練習対局をやめ、家にこもってパソコンに向かい、電脳相手に研鑽を重ねている」(将棋ライター)
この2人の棋風を屋敷九段が比較する。
「お互いに居飛車党で、粘り強い長考派。また、両者ともAIソフトを駆使している点も似ています。どちらも攻め受け強打の持ち主ですが、どちらかと言えば、豊島竜王がより強い手を繰り出しているイメージです。これに対し、藤井王位はじっくり受け身になることが多い」
これに対し、深浦九段はこう分析する。
「互いに居飛車党ではあるが、藤井王位は全ての駒をバランスよく活用していくタイプ。対して、豊島竜王は速攻タイプで、自分から主導権を握りにいく。いわば序盤戦からガンガンいくタイプ。そのため、藤井王位が対応しきれてないというところは、今までの試合でもありました」
藤井二冠の師匠である杉本昌隆八段(52)も「同じ居飛車党の2人は読み筋が合う」と評価するが、公式戦初対決となる17年の棋王戦挑戦者決定トーナメントでは、豊島八段(当時)が藤井四段(当時)をまんまと「千日手」に誘導し、指し直した上で快勝している。まさに経験の差を見せつけたのだ。
「今のところ藤井王位が豊島竜王に苦手意識を持っている感じではありません。どの将棋もきわどい展開で終盤に豊島竜王が競り勝っています。1勝7敗というスコアほどの差はありません。ただ、若くて伸び盛りの藤井王位でも、今後も負けが続けば、そうした意識が芽生える可能性はあります」(屋敷九段)
苦手意識を植え付けられる前に一刻も早く克服したいところだが‥‥。