今年の2月2日、「アマゾン創業の日」の7月5日の株主総会をもって最高経営責任者(CEO)を退任し、取締役会長に退くとしたジェフ・ベゾス。もともと「宇宙事業を始めるためにアマゾンをはじめた」と事あるごとに口にしてきただけに、自ら立ち上げた宇宙ベンチャーのブルーオリジンなど、本業以外の“副業”へ比重をシフトさせた活動をしていくと見られる。
「ベゾスは退任を発表したと同時に全社員にメールでメッセージを送っていますが、そこには教育支援などを行う慈善活動基金のベゾス・デイ・ワン・ファンド、気候変動対策のベゾス・アース・ファンド、13年に個人で買収した名門マスコミのワシントン・ポストと並んでブルーオリジンの活動を行っていくとしています。そしてさっそく6月7日には、CEO退任から2週間後の7月20日にブルーオリジンが打ち上げ予定の有人探査船の『ニューシェパード』に弟のマークと一緒に搭乗する予定だとインスタグラムで明かしました」(経済ジャーナリスト)
さすがは今や世界を支配するGAFAの一角であるアマゾンを共同で立ち上げた人物。第一線を退いたら社会貢献活動に、昔からの夢の実現にと、さぞや人々も憧れと尊敬をもって眺めているのかと思いきや、そこはちょっと事情が違うようで…。
というのも、世界最大のオンライン署名サイトの「チェンジ・オルグ」には、「ベゾスが宇宙に旅立った後、再び地球に戻って来てほしくはない」という署名ページが2つ立ち上がり、5万人を超える署名を取り付けているのだ。その1つ、「ジェフ・ベゾス氏が地球に戻ってこないようにしてください」というタイトルのものには3万2000人を超える署名が集まっている。どうにもかなり嫌われているようなのだ。
「理由はいくつか考えられますが、主に金の問題でしょう。最近アメリカのメディアが報じたところによれば、ベゾスの資産は06〜18年の間に1270億ドル(約13.5兆円)増えたものの、この間に支払った連邦税はわずか14億ドル(約1500億円)しかなかったとされています。しかも会社の株価が2倍になった07年は所得税を払っておらず、11年には損失を計上して節税。さらには子供のためにと4000ドルの税控除を受けていたといいます」(前出・ジャーナリスト)
かたや、19年には妻のマッケンジーと離婚しているが、その時に支払った慰謝料4兆円は会社の株式で支払われ、マッケンジーはこれの半分を社会に寄付するとして、今のところ寄付した総額は85億ドルにも及ぶ。ベゾスとは好対照だ。加えて、先日にはベゾスと一緒に「11分間」の宇宙旅行に一緒に参加できる椅子を巡ってオークションが行われたが、落札者の名前は明かされていないものの、その額なんと30億7000万円だったのだ。
ましてやアマゾンは市場の独占が問題視されて、5月にワシントンDCの司法当局から訴えられたばかり。となれば社会からの利益の吸い上げ方が問題視されているわけで、その後の振る舞いとして世間の常識との間尺が合わないと多くの人々が感じているということだろう。
そうなると、宇宙への同行者の費用は負担するとし、今や「お金配り」アプリを開発している日本の経営者がなんとも好ましく思える。
(猫間滋)