それだけではない。この信金関係者によれば、課税所得1300万円に連動する形で、住民税と国民健康保険料の納付額も跳ね上がるというのだ。具体的には、住民税は年間130万円(課税所得の10%)、世帯あたりの国民健康保険料も年間80万円以上に達してしまうのである。
しかも、カツカツ経営の零細飲食店の場合、売り上げの圧縮や経費の水増しなどによって赤字申告に持ち込み、国民年金保険料納付の全額免除を受け続けているケースも少なくない。今年の協力金バブルで来年の全額免除がパーになれば、月額1万6610円、年額にして19万9320円の納付義務がさらに課されることになるのだ。
「要するに、完全休業を決め込んだ例のカラオケスナックの場合、所得税や住民税など各種の納付金額を合計していくと、年間500万円を超える支払いが生じます」
これが信金関係者の結論だが、こうした事実を知らないまま、住民税非課税世帯への返済免除がある小口融資制度にも手を出した経営者もいるという。
ちなみに、休業ではなく時短を選んだ場合、時短営業分の売り上げが年間所得として協力金などにさらに上乗せされることになる。また、時短営業による売り上げの多少にかかわらず、協力金バブルで膨れ上がった年間所得から差し引くことのできる経費はたかが知れている。休業のケースと同様、時短営業していたとしても、やはり課税地獄に陥ることに変わりはない。
当初、菅義偉総理(72)は特別定額給付金(国民全員に一律10万円)の再給付を野党側、そして、連立政権を組む公明党から強く求められても、頑として首をタテに振らなかった。そのあまりの頑迷ぶりは、与党内からも「菅ケチ偉」と揶揄されたほどだが、そのドケチ総理が今回のバブリー協力金のバラマキに踏み切ったのはなぜなのか。
自民党反主流派の有力議員が舞台裏を明かす。
「菅総理も財務省も、バブリー協力金の3分の1くらいは国庫に取り戻せることを知っていたからだよ。ただ、その事実を制度の打ち上げ当初から世にアナウンスしてしまうと、バラマキによる政治的なアドバルーン効果は薄れてしまう。つまり、支持率アップにはつながらない。だから、協力金が所得税の課税対象になるか否かについては、可能な限り曖昧にしておいた。菅ケチ偉総理と腹黒財務省による〝騙し討ち作戦〟だな」
事実、歌舞伎町(東京都新宿区)で客席10程度のスナックを営む50代のママも、次のように憤慨する。
「昨年4、5月の持続化給付金申請時は『ラッキー!』と思いました。タダでもらえるお金だと。でもその後、友人の飲食店経営者と話していて気付きました。確かに公的な文書やサイトなどで、課税されるというハッキリとした説明を見た記憶はありませんから。でも私の店の場合、協力金をもらっても、毎月数十万円の家賃や税金を払ったらトントンがいいところで、バブルなんてとんでもない話」