コロナ休業協力金”バブル”の裏に「罠」と「課税地獄」(1)半年で888万円の試算に

 コロナ感染拡大防止の名目で「戦犯」扱いを受け、酒提供自粛や休業を強いられ続ける飲食業界。自粛協力金の支給もダラダラと遅れ、「もう限界だ」の声が上がる。その一方で、限界どころか菅政権の巧妙な「罠」にハマり、「次の地獄」が待ち構えていた。一体、どれだけの人がこのカラクリを知っているのか。

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの適用地域を中心に、休業や時短に応じた飲食店に支払われるいわゆる「協力金」。

「1日につき一律6万円」とのフレコミでも話題になったこの協力金制度を巡っては、経営規模の大きい対象業者から「協力金だけでは家賃も賄えない」などの不満が噴出する一方、経営規模の小さい対象業者からは「まさに濡れ手で粟。笑いが止まらない」などと歓喜の声が上がったのも事実である。

 そんな状況下で「協力金バブル」なる新語も誕生したが、対象業者らの間で悲喜こもごも語られるこの言葉は、まさに「天下の愚策」と酷評される今回の不公平制度を象徴するキーワードなのだ。

 この協力金制度が本格化したのは昨年暮れからで、一律の支給額は1日あたり2万円→4万円→6万円と徐々にアップ。その後、制度は前年の売り上げに応じた支給方式に改められたが、それでも最低の支給額は1日一律4万円(宣言地域と重点措置地域を除く都道府県内のその他の地域は2.5万円)の水準が維持されている。

 支援制度に詳しいエコノミストがその矛盾を指摘する。

「高い家賃を払い多くの従業員を抱える飲食店にも、そうでない飲食店にも一律に同額を支給という仕組みは、いくらなんでもムチャクチャです。本来なら最初から前年の売り上げに応じた支給方式にして、経営規模に比例する形で可能な限り傾斜配分すべきでした。貧乏クジを引かされた業者から『協力金バブル』との、悲鳴にも似た恨み節が飛び出すのも当然でしょう」

 では、濡れ手で粟の飲食店は、実際に今年1年間でどれほどの協力金を手にすることになるのか。

 問題点を浮き彫りにすべく、オーナーママがひとりで切り盛りする、ウナギの寝床のごときカラオケスナックを例に見てみよう。

 宣言地域にも重点措置地域にも該当する店舗だが、空き店舗が目立つ郊外地域ゆえ、店の家賃は月10万円。要するに、地元の常連客が定期的に落とすカネによって、店の経営がカツカツで成り立っているようなカラオケスナックで、オーナーママは時短ではなく休業を選択した。

 同レベルの飲食店を数多く抱える神奈川県某市の商工会関係者が解説する。

「神奈川県の場合、今年6月20日時点で都合11弾に及ぶ協力金申請が可能になっています。その上で、問題の一律支給が始まった第3弾から直近の第11弾までに、手にすることができる協力金の最大額を試算すると、22万円(第3弾)+108万円(第4弾)+162万円(第5弾)+168万円(第6弾)124万円(第7弾)+76万円(第8弾)+88万円(第9弾)+80万円(第10弾)+60万円(第11弾)になります」

 つまり、カツカツ経営のカラオケスナックでも、今年6月までの約半年間で合計888万円の協力金が舞い込む計算になるのだ。しかも、協力金の支給は6月20日で終わりになるわけではない。

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