感染者数の減少に伴い、日本政府は19都道府県で発令されている「緊急事態宣言」を9月末で解除した。しかし第6波を懸念する声も上がる中、また今までの繰り返しとはならないか。ならば世界各国のコロナ政策を例に、今後のニッポンの在り方を探っていこう。
東京五輪開催期間に日本では1日のコロナ感染者数が2万人を超える日々が続き、医療はまさに逼迫状態。病床不足から自宅療養せざるをえない事例が相次ぎ、まさに日本は「緊急事態」だった。それが、9月に入って右肩下がりに感染者が減少している。
日本の2回目ワクチン接種率は55.8%(「Our World in Data」調べ、他国も15〜23日現在で以下同)。国民の半数以上が完了したことになる。世界各国を見渡しても、やはりワクチン接種により日常を取り戻している国が多いようだ。フランス・パリ在住のツアーガイドが語る。
「6月にロックダウンを解除してからは、街なかのカフェでコーヒーを飲んでいる市民をよく見かけます。ほぼ全員ノーマスクで、コロナ禍前を彷彿させている。安心して出かけられるのは、ワクチンパスの効果だと思います」
フランスではワクチンパスが「衛生パス」とも呼ばれ、「ワクチン接種証明書」や、PCR・抗原検査を受けて72時間以内の「陰性証明書」などがQRコードでデジタル化されている。国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、
「フランスでは8月から飲食店や百貨店、長距離移動のための交通機関や娯楽施設で、ワクチンパスの提示が義務化されました。ヨーロッパでは個人の自由を尊重する考えがありますが、義務化によってワクチン接種率が上がっている(64.2%)。ヨーロッパは文化的にマスクをしない人が多いのですが、室内でのマスク着用を怠ると罰金という制度も導入して、より効果的な感染対策に取り組んでいます」
フランスの感染者は右肩下がりとなっているが、アメリカでも同様の取り組みを始めていた。感染症研究者でアメリカ国立研究機関博士研究員・峰宗太郎氏が現状を解説する。
「アメリカの感染状況は、地域によってかなり違います。全体としては確実に減少してはおらず、流行が続いている、と言えるでしょう。感染が続いている理由としては、ワクチン接種率の停滞です。一時は民主党支持派の地域を中心に、1日400万件を超えるペースで接種が進みましたが、彼らが打ち終わってからは1日80万件未満となり、ついには日本が接種率を追い抜きました」
日本より早い段階で進んでいたワクチン接種だが、約55%で頭打ちという。次なる対策はどうなっているのか。
「そこで、ニューヨークではワクチンパスが義務化されました。基本的にはワクチンを打っていないと飲食店やイベントには顔を出せない状況になっていますが、結果的に感染がかなり抑えられ、成功していると思います」(峰氏)
パスには一定の効果があるようだが、経済評論家の佐藤治彦氏は釘を刺す。
「いずれワクチンパスは日本でも導入されると思います。マイナンバーと絡める仕組みが検討されていますが、ルールが曖昧なまま進んでしまっている。税金から健康情報に至る何から何まで紐付けるのは少し怖いと感じます。行政と企業や国民の信頼関係が築けない状態では成立しない制度でしょう」
*「週刊アサヒ芸能」10月7日号より。(2)につづく