仏AFP通信は5月16日、かねてから中国四川省で建造中だったレプリカ版「沈まないタイタニック号」の最新状況を写真入りで報じた。このレプリカは、全長269.06メートル、幅28.19メートルと姿形は本物そっくりで、宴会ホールや劇場、プールなども完備。宿泊客も受け入れ、5つ星級のクルーズサービスが提供される予定。テーマパークの目玉として、内陸部の貯水池に停泊されるという。
中国在住のジャーナリストが語る。
「中国でも映画『タイタニック』は爆発的な興行収益を記録した大ヒット作。そんなこともあり、同作上映後には、タイタニックが沈没する際に乗船し、生き残った6人の中国人旅行者の話を描いたドキュメンタリー『シックス』が放映され、大人気になるなど、依然、タイタニックに対する関心は高い。しかも、オーストラリアのクルーズ会社が一時、タイタニック号再現を計画したものの、工事が大幅に遅れ、いまだ航海予定の目処が立たないこともあり、完成すれば、それこそ世界初。コロナで海外からの観光客は期待できませんが、関係者は、国内の観光客だけで十分ペイできると意気込んでいますからね。世界初のタイタニック号完成に向け、建造がさらに急ピッチで進むことになるでしょう」
タイタニック号の客室数は835、旅客定員は2435人。1912年4月に起こった沈没事故では、うち1,513人が亡くなり、710人が生還したものの、当時としては、沈没による最大死者数を記録した史上最悪の海難事故といわれたものだ。
とはいえ、その内装や調度品の数々は、どれも超がつく一流品が使われ、レプリカといえど、中国の技術者たちがそれらをいかにして再現するのか、という点にも、早くから注目が集まっていた。
報道を受け、SNS上では《どうせ、いつものパクリでしょ!》《なぜ、タイタニック?という感が否めない》《わざわざ山間地帯の四川省まで行ってタイタニック号に乗る必要ある?》といった、相変わらずの批判めいた意見がある一方、《素直に凄いと思う!完成したら行ってみたい!》《インバウンドじゃなく国内観光客だけで勝算あり、というのが中国の強みだよな~》と、好意的にとらえる声も多く、なかには《批判している連中は、勢いある中国に嫉妬しているからなんじゃない。他国の批判もいいけど、そんなこと言っていうるうちに、技術力も生産力も、エンタメもどんどん中国に抜かれちゃうよ》という声も。
前出のジャーナリストが語る。
「2000年前後の中国エンタメ界は、正直、アメリカや日本のパクリで成り立っていました。ところが、動画配信サイトが台頭したことにより、世界中からエンターテインメントを『買う』時代に入ったんです。それが10年代初頭のことです。で、その後5年ほどしてから、今度は日本やアメリカのコンテンツ先進国と一緒に『作る』という動きが生まれて、そして、今、中国では、そのノウハウを生かして、共同制作から独自制作という道を歩み始めた。これは、テレビ、映画、音楽だけでなく、テーマパークも同様です。そのため、今回のタイタニック号の再現は中国エンタメビジネスの今後をうらなう意味でも、大きな影響を持つはず。成功すれば、この先、中国のエンタメ業界が世界で大きなポジションを占めていくことは間違いないでしょうね」
完成に向けて、今、中国じゅうの注目が集まっている。
(灯倫太郎)