「高圧外交」中国の強硬姿勢の裏にある驚愕”宇宙支配“シナリオ!

 ワシントンで16日に開かれる菅義偉首相とバイデン大統領との日米首脳会談。当然のことながら、その最重要課題の一つが、中国をめぐる問題だ。

 3月には、米軍トップや元政権幹部らが相次いで「中国による台湾侵略が切迫している」と警鐘を鳴らしたが、依然、中国は強硬な姿勢を貫き通している。

 実は中国がそこまで強気でいられる背景には、「2016年8月、中国が世界初の量子科学実験衛星『墨子号』の打ち上げに成功したことが大きく関わっている」というのは、宇宙開発事業に詳しい科学ジャーナリストだ。同氏が解説する。

「量子とは物理世界で最小の、分割不可能な基本単位で、つまり、世の中に存在する全てが量子で出来ているといっていい。量子には『量子もつれ』という奇妙な特性があり、それを通信技術に利用すると、いかなるコンピューターを用いても暗号を解除することができなくなるんです。つまり、『墨子号』は、人類が解読できない量子暗号通信技術を搭載した人類初の人工衛星というわけです。それを中国が米ソよりも早く打ち上げに成功したということに大きな意味があるんです」

 軍事の世界には「暗号を制する者が世界を制する」という言葉があるが、従来のコンピュータ技術を用いた情報伝送は盗聴されやすいという欠点がある。ところが、量子情報はコピーできない。そのためハッキングできない状態で情報の送受信が可能になるというのだ。

「つまり中国の暗号システムをアメリカは解読できなくなるということ。一方、米国のコンピューター技術を用いた暗号は量子通信によって解読することができるため、米国の軍事機密情報が丸裸にされてしまう危機が出てくるということです」(同氏)

 これまで、この量子通信技術は地上の光ファイバーを用いていたため、光の減衰もあり、伝送するためには膨大な地上局を設置する必要があった。ところが、宇宙空間では光が損耗することがないため、ダイレクトで伝送することができる。そこで、先を競うように米中ソが中心となり、衛星開発に力を注いできたのだという。

「ですから、中国が『墨子号』の打ち上げに成功した、というニュースが伝えられた時には、米国をはじめ各国の科学者は皆、なぜ中国なんだ!と呆然としたといわれます。中国メディアでは、量子通信技術研究者の談話として、5年後には多くの機密部門で使用が始まり、10年後には金融業や銀行などの大手機関で使用が開始され、15年後には一般家庭へも導入、といったシミュレーションも出していますが、実現すれば世界各国がその技術を求め、中国にすり寄ってくることは間違いありません。そうなれば、ハッタリではなく、実際に中国が世界を制す、という可能性が現実味を帯びてくるかもしれませんね」(同氏)

 現時点で、宇宙空間にあり、そこで地上と量子暗号をやり取りできる衛星は『墨子号』一機のみ。むろん、米国がこのまま黙って指をくわえているとは思えないが、今後は宇宙空間を制する者が、世界を制することは間違いない。米中のハイテク戦争が激化するの中、日本が担う役割は大きい。

(灯倫太郎)

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