日本の供給不足をよそに…ワクチン株で巨万の富を築いた経営者たち

 当初はファイザー社から6月までに6000万人分のワクチンの供給を受ける契約をしたものの、1月になって「年内に7200万人分(1億4400万回)」に変更していたことが発覚。また、特殊な注射器の不足を指摘する声もあって、接種回数がさらに減る可能性も一部メディアで報じられている。

 河野太郎・ワクチン担当大臣が契約書の中身を見ると、「確約」ではなく(ワクチン供給での)「ベストエフォート(最大限の努力)」とされていたことが判明。世界的なワクチン争奪戦で日本も「受け手」という“弱い立場”で翻弄され続けている。

 そんな喧噪をよそに、“強い立場”のワクチン開発企業とその経営者らは笑いが止まらないかもしれない。

 つい先ごろワクチン開発でもはやお馴染みとなったアストラゼネカが、やはりこちらもワクチン開発でお馴染みとなったモデルナの株を約1070億円(10億ドル)で売却。多額の売却益を得ていたことが同社公表の年次報告書から明らかになったという。

「今回のコロナワクチン開発では競合した両社ですが、実はモデルナがまだ資金繰りに窮するような企業だった頃の2013と16年にアストラゼネカが出資。それにより9%を保有する株主になっていた経緯があったのです。今でこそ2兆円近い売り上げを見込むモデルナですが、ワクチン開発に成功するまでは赤字続きの企業だったからです」(経済ジャーナリスト)

 モデルナはもともとmRNA(メッセンジャーRNA)を用いた製薬などで立ち上げられたバイオベンチャー企業だ。そしてその技術の優位性をワクチン開発で発揮、昨年11月には有効性94.5%という高い効果が治験で実証された。アストラゼネカの報告書からはモデルナの株を売却した時期は読み取れないが、おそらくは昨年12月と見られている。

 そもそもアストラゼネカが出資したのは「投資」ではなく「技術提携」の目的からだった。だから互いに手を取り合った企業同士とも言え、となれば、長年の努力が報われたということなのだろう。

 ワクチン開発で儲けたのは会社だけではない。ワクチン開発に成功した会社の経営者らも巨万の富を得ている。

「ファイザーが昨年の11月に臨床試験で『90%以上の効果』と伝えられた後、当然同社株は急騰したのですが、その後なぜか急落するといったことがありました。理由は、ファイザーのCEOのアルバート・ブーラ氏が自身で保有していたファイザー株を大量に売却したとの報道が出たからです」(前出・ジャーナリスト)

 やはりファイザーの上級副社長のサリー・サスマン氏も自社株の売却で約1億9000万円超の利益を得ていたようで、モデルナCEOのステファン・バンセル氏も大量売却したことがニュースになった。

 世界的パンデミックは製薬ベンチャーやその経営陣にとって、またとない“商機”とも言えるのかもしれない。

(猫間滋)

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