吉村府知事“推し”の「大阪ワクチン」が頓挫 「期待を盛り上げたのはメディア」

 大阪の創薬ベンチャー「アンジェス」は、新型コロナワクチン開発を断念したことを9月7日公表した。第1波が高まる中、吉村洋文大阪府知事は、同社が開発に着手したワクチンを「大阪ワクチン」と命名し、あたかも数カ月で実用化できるような発言で「アンジェス推し」をしていたのだが‥‥。

 ところが毎日新聞が「開発中止」について関係者を取材したところ、同社創業者で大阪大学寄付講座教授の森下竜一氏は「期待を盛り上げたのはメディア」と発言。では吉村知事はなぜああも前のめりになってアンジェスを推したかと言えば、「森下さんから聞いた話に基づいて発言した」と言っている。だから結果的に彼らが焚きつけたはずなのだが、最終的にはそれに乗ったマスコミが悪いという。

「ましてやアンジェスには国から75億円の助成が下りています。これを受けて同社の株価は一時5倍にも高騰しました。これを外から見ればアンジェス1人が得をし、吉村知事を発信源として周囲が乗せられた形。でも、ほとんどの市場関係者からは『やっぱりな』という声しか聞かれません」(経済ジャーナリスト)

 ただ創薬全体としては、成功するのは「2〜3万分の1」とも言われる一種のバクチだ。だから吉村知事が「頓挫」の報を受けて、「チャレンジしないと成功もない」と申し開きをするのも頷ける話。だが「イソジン吉村」とイジられたことのある吉村知事が言うと説得力はイマイチ。さらには森下氏が、なぜか万博の総合プロデューサーになってイベントに顔出しまくりなのは全く意味が分からない。

「安倍元総理のお友達だったからじゃないでしょうか。森下氏は安倍政権の『規制改革推進会議』の委員で、安倍さんとはゴルフ仲間だった仲。大阪の維新勢力はトップだった松井一郎大阪市長と安倍・菅の両首相との距離の近さが売りでしたから、その関係で森下さんが重用されたのでは」(全国紙記者)

 その松井市長も、一時は不足した医療用ガウンの代替として雨ガッパの寄付を募って、騒動になったこともあった。最終的には集まり過ぎて余った雨ガッパが市庁舎に溢れ、市消防局から指導を食らうという、アベノマスク同様のオマケが付いた。

 安倍元首相には「お友達」で周囲を固めることへの批判もあったが、同様の批判が「大阪ワクチン」の頓挫で大阪維新にも集まりそうだ。

(猫間滋)

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