巨人ファンは「東京ドームで決めてくれ」と願っていたはずだが、原辰徳監督は日本シリーズを優先した。11月1日の東京ヤクルト戦、2000本安打まで「あと4本」と迫っていた坂本勇人がスタメンから外れた。
「若干、疲労が蓄積されていたようです。詳しい説明はありませんでしたが、怪我をさせないためでしょう。試合前はキャッチボールと軽めのランニングだけ。守備練習には加わりませんでした」(スポーツ紙記者)
原監督もファンの気持ちはわかっていたはず。本拠地・東京ドームに帰ってくるのは7日。次節のマツダスタジアムへの遠征メンバーから外す選択も考えられたが、坂本の体調管理を優先した。同日、エース・菅野智之も一軍登録から抹消された。これも、日本シリーズに向け、万全を期すためだろう。
「今年のセ・リーグは、クライマックスシリーズ(以下=CS)は行われません。優勝と同時にシリーズ進出が決定したので、主力選手を休ませ、若手をテストすることは間違いではありません。ただ、残り試合がシラケた消化試合にならなければいいのですが…」(前出・スポーツ紙記者)
坂本はタイトル争いに加わっていない。また、菅野は前日10月31日の先発で14勝目を挙げており、残りの試合数からして最多勝のタイトル獲得はほぼ確定となった。僅差で本塁打、打点のタイトル争いをしている岡本和真、新人王の掛かった戸郷翔征らは一軍に残ったが、「消化試合の様相」は否定できないだろう。
近年、CSの定着により、優勝決定後も順位争いが熾烈化し、調整が優先される消化試合は少なくなった。日本シリーズ優先の調整は新型コロナウイルス禍がもたらした「今季限りの光景」と言えそうだが、こんな声も聞かれた。
「原監督は本当に負けず嫌いですよ。昨年の日本シリーズで4連敗した悔しさを今でも忘れていません。シーズン序盤、打撃不振だった坂本や丸にバントのサインを出したのも、すべて日本シリーズに駒を進めるためでしょう」(球界関係者)
パ・リーグの進出チームはまだ決まっていないが、日本シリーズに懸ける思いがハンパでないことが伝われば、本拠地で坂本のメモリアルが見られなかったファンもこの“鬼采配”に納得するしかないだろう。もっとも、言い訳がましく説明するのは、原監督の美学に反する。2年続けて日本シリーズで敗れれば、それこそ言い訳ができない。「坂本のスタメン外し」は決意表明というわけか…。
(スポーツライター・飯山満)