原辰徳監督が臨んだドラフト会議には“伝説のシーン”がない。
10月26日のドラフト会議に向け、10月20日に巨人がスカウト会議を開いた。それには原監督も初めて同席しており、1位入札の選手を決定したと見ていいだろう。
「大塚淳弘球団副代表が取材に応じましたが、近大・佐藤輝明内野手に関する質問が多かったようです」(スポーツ紙記者)
同副代表も「名前は出ていない」とはぐらかし、指名選手の公表はしなかった。「佐藤で間違いない」との見方も支配的だが、「最後まで分からない」なる冷静な分析も聞かれた。
「巨人サイドから『1位は即戦力の外野手』なる話が出たのは、8月28日のスカウト会議が終わった後でした。長距離を打てるスラッガータイプということで、外野も守れる佐藤の名前が出てきたんですが、今回は、大塚副代表は外野手とは言わず、『野手』というワードで話していました。佐藤指名の表明は最後まで聞かれませんでした」(ベテラン記者)
主に三塁を守ってきた佐藤で1位入札するから、「野手」と言い換えたのか。それとも、佐藤以外の意中の選手がいるのか、大塚副代表の同日のコメントはどちらにも解釈できるというわけだ。
「仮に佐藤ではない」という前提だが、中央大・五十幡亮汰外野手も無視できない存在になりそうだ。
「俊足が武器で、課題だった打撃力は3年秋から急成長しています」(アマチュア野球担当記者)
中学時代の全日本大会でサニブラウン・ハキーム選手に勝って、100m、200mの二冠に輝くなど“異次元の速さ”を持っている。ソフトバンクの周東のようなタイプと言っていいかもしれない。いずれにしても、「誰を1位指名するか」の答えはドラフト当日に持ち越されたが、心配なのは原監督のほう。
今季、巨人史上最多だった監督通算1066勝を抜き、歴代トップに躍り出た。記録上では「原監督がナンバー1」だが、ドラフト会議における“伝説”がまだない。
「藤田元司監督は80年に今日の原監督を4球団競合の末に引き当て、長嶋茂雄・終身名誉監督も92年に松井秀喜の抽選を引き当てています。原監督にはまだそういう伝説的なシーンがありません」(前出・ベテラン記者)
昨年のドラフトで、原監督は1位の再入札で抽選に臨んだ。それを外した時点で、原監督のドラフトは通算1勝10敗となった。08年に手にした、たった1回の勝利にしても、引き当てた大田泰示は巨人で伸び悩み、トレード先の日本ハムでようやくその才能を開花させた。
シーズンの勝利数で名将となった原監督に相応しい“ドラフトの伝説シーン”を……。そう願う巨人関係者は少なくない。大方の予想通り、佐藤の入札となれば、抽選は必至。戦力補強はもちろん、球団史に残る名シーンを再現するためにも、競合他球団との「くじ引き」に大きな注目が集まりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)