旅行会社のHISが新業態の店を開店させたが、これがなんと「蕎麦屋」というから驚きだ。その蕎麦屋は10月2日に埼玉県川越市でオープン、11月には都内で2号店を開業する予定だという。
今回出店したのは、神奈川県内で31年間続く名店の味を継承したもの。一方で、蕎麦屋は個人経営が多く、跡継ぎがなかなか見当たらなく、客に惜しまれながらやむなく閉店というパターンは珍しくない。そこにコロナ禍が加わり、さらなる逆風に晒されている。そして旅行業界にあってやはりコロナ禍に喘ぐHISとしては新規事業に乗り出す必要があり、今回、蕎麦屋という形に落ち着いたということなのだが……。
「HISはかねてから旅行の1本足打法からの脱却を図るべく、ホテル経営などの派生産業に乗り出していましたが、なかなか波に乗れていない状況にありました。そこへきてのコロナ禍で、子会社の長崎のハウステンボスなども含めてHISグループは全体的に大きなダメージを受けました。外食事業も本業に関連するからということなのでしょうが、異業種からの参入が果たしてどうなることやら」(経済ジャーナリスト)
蕎麦屋だけでもかなりの違和感はあるが、HISはこれと同時に日本酒業界にも進出。日本酒を取り扱う企業と提携して海外販売に乗り出すという。寿司やラーメンばかりが注目されがちな日本の食文化の見直しに新たな商機を見出すということらしい。
10月5日にはワタミが既に展開している居酒屋の4割を焼肉屋に業態変更すると発表して話題となった。ワタミは5月から人材派遣業に参入するなど、コロナ禍での事業リスクの分散と経営全体の安定性確保の道を探ってきた経緯がある。
「同じようにラーメンチェーンの幸楽苑もやはり人材派遣業に参入していて、居酒屋の『金の蔵』などを展開する三光マーケティングフーズも社員を農家に出向させるなど、外食各社はこの危機を乗り越えるためにあれやこれやの試みを行っています」(前出・経済ジャーナリスト)
ポスト・コロナを見据え、外食産業の勢力図が激変期を迎えるかもしれない。
(猫間滋)
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