しゃぶしゃぶ「木曽路」が焼肉「大将軍」を買収、仁義なき“肉バトル”の行方

 しゃぶしゃぶの「木曽路」は10日、首都圏で焼肉店を展開する「大将軍」を買収、子会社化すると発表した。木曽路はコロナ禍で21年3月期の営業損益は16億円の赤字になる見通しを明らかにしている。一方の大将軍も20年6月期は1億6800万円の赤字で、両社共に苦しい中での再スタートになる。

「しゃぶしゃぶはこれからの寒冷期が稼ぎ時。一方の焼肉は夏場の売り上げが大きい。木曽路は焼肉の『じゃんじゃん亭』も東海地方で展開していますが、売り上げの70%はしゃぶしゃぶです。大将軍を傘下に置くことで事業の柱を増やし、さらにシーズン毎に異なる収益を安定させようという狙いだと考えられます」(経済紙記者)

 木曽路がM&Aに打って出るのは初めてのこと。現在の厳しい経営環境を乗り切るため、大勝負に出た格好だ。

 焼肉で大勝負といえば、当然頭に浮かぶのはワタミだ。10月5日に居酒屋から焼肉店への業態変更を発表、現在、店舗を切り替え中で、22年3月期末までには360店舗の3分の1の120店舗を焼肉屋に衣替えさせ、5年間で400店舗まで拡大することを目標とした。投資金額は約100億円というから、まさしく大勝負だ。

 なぜこうも焼肉屋が人気なのか。前出・経済紙記者はこう解説する。

「背景にはここ数年の根強い焼肉人気があります。特に昨年から焼肉業界ではM&Aが進んでいます」

 19年には居酒屋の「チムニー」が焼肉の「牛星」と「山河」を、名古屋が拠点の居酒屋の「海帆」が東京を中心に立喰い焼肉「治郎丸」の事業を弥七から受譲。安楽亭は焼肉以外にも、「ステーキのどん」と「フォルクス」の肉関連のアークミールを買収して事業強化を図った。

 そして今年は飲食業がコロナ禍で苦戦を強いられる中、これを機に本業の見直しとポストコロナでの経営を見据える必要に迫られた。その中で、焼肉進出の動きが続いたということだろう。

 だが生き残りの椅子はそう多くはない。仁義なき焼肉屋バトルが今後激しさを増すことは必至だろう。

(猫間滋)

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