ワタミが今度は寿司屋に進出、渡邊社長の攻勢に“右往左往”の声も

 あのワタミが今度は寿司業界に参入するのだという。

「ワタミは12月8日に寿司事業に参入すると発表、翌日の9日にはさっそく東京・錦糸町に1号店の『すしの和』を開店しました。それなら元は居酒屋チェーンのワタミなだけに気軽に入れる回転ずしだろうと思いきや、回らない普通の寿司屋です。とはいえ、そこはワタミといったところで、握り寿司は1貫88円(税込み96円)と大衆路線は変わっていません。独自色は寿司だけでなく鳥取県のブランド鶏である大山どりの専門店も兼ねていることで、88円(税込み96円)の焼き鳥や鍋料理も提供し、ウェブ上では横浜の老舗寿司店の『すし善』監修によるブランドでの寿司の宅配も行います」(経済ジャーナリスト)

 コロナ禍は大人数が集まって密状態を作る居酒屋を直撃、換気がきいて一人でも食事を楽しめる焼肉と回転ずしがコロナ禍の外食では勝ち組2強となった。そこでワタミは早くから焼肉へと業態変更を図ってきた。そして今度は寿司なのだという。

 渡邉美樹会長兼社長によれば、今回の業態変更はウィズコロナの時代に対応した目的来店業態とのこと。出店先は住宅街が広がる駅前として、ファミリー層の取り込みを図る考えだとか。なので客単価も回転ずしは1000円ほどなのに対し、2500円ほどと高めの設定をしているという。

 一見すると焼肉に寿司にと“いいとこ取り”をしているように見えるが、渡邉氏なりの目算があるようだ。だが一方で、渡邉氏の時代の流れを見る目に曇りが生じているとの厳しい見方もある。

「まずはタイミングが最悪でした。くしくも同じ12月9日には、スシロー、くら寿司の回転ずし2強が新たな旗艦店を出店した日でもあったんです。スシローは外装はアメリカンでポップですが内装は江戸テイストの和で落ち着くといった店舗をUSJ隣接のエンターテインメント型複合商業施設のユニバーサル・シティウォークに、くら寿司は外食意識が高いとされるZ世代(10代〜26歳)を意識して、障子を閉めると個室になるボックスシート席や原宿の街並みを眺めながら食事ができるスタンド席のある店舗を原宿に出店しました。いずれも回転ずし店の次をニラんだ出店で、ワタミのひと昔前感は否めません」(同)

 ワタミは寿司だけでなく鶏にもこだわり、寿司以外のメニューが充実しているのも大きなウリの1つだ。ただそこに大きな付加価値は見つけづらい。加えてワタミが焼肉で多く出店をしたのはロードサイドで、ポスト・コロナを考えた場合はロケーションの悪い店に陥る可能性がある。唐揚げが流行ればすぐさま「から揚げの天才」で唐揚げに飛びついた過去も思い出され、「渡邉さん、右往左往してやいませんか」という見方が多いのだ。

 今度の店は、最初は直営で30店舗に増やしてノウハウを蓄積後、フランチャイズ化して100店舗まで増やしたいとしているが、さてどんな船出になるのやら。

(猫間滋)

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