中食に活路!? 鳥貴族「ホールディングス化」で “1本足経営” 脱却なるか

 6月5日、鳥貴族は来年2月から持株会社に移行して、社名も「鳥貴族ホールディングス」に変更すると発表した。ポスト・コロナの企業活動を見据えた場合、居酒屋・外食業界では同じような動きが他社でも起こってくるかもしれない。

 持株会社では、他の株式会社の株式を多数保有して、その会社を支配する会社が上に置かれ、事業会社がその下に置かれることになる。だから鳥貴族の場合は、ホールディングスが上の立場に立って、これまでの焼き鳥居酒屋を運営する会社は8月から「鳥貴族JAPAN」という会社としてホールディングスの支配を受ける。

「『JAPAN』とあるように、今後は国内だけでなく海外進出も図る計画です。また、持株会社の下でグループ内ベンチャーを立ち上げ、テイクアウトや宅配、惣菜の中食や冷凍食品の内食へも進出するなど、新規事業への参入も進める模様です」(経済ジャーナリスト)

 コロナが外食を直撃したことは今さら言うまでもなく、さらには複数人が集まって酒を飲みながらわいわいがやがやと語り合う居酒屋産業は「密」と「飛沫」をそのまま体現したような業態。従って、このまま客足が遠のいた状態が続けば、経営が行き詰まってしまうのは明らか。外食がコロナ禍でダメージを受ける一方で注目を集めたのが「中食・内食」で、これら業態がグループ内部にあれば外食の崩壊リスクを補うことになり、かつ、これまでに培ってきた焼き鳥の強みを家庭に届けて生かすこともできる。つまり、焼き鳥屋オンリーの「1本足経営」からの脱却を図るというのが今回の制度変更が持つ意味の1つとしてある。

 またもう1つには、コロナ以前から拡大する中食・内食の成長性を取り込もうという意図もそこにはある。

「特に1985年は1.1兆円だった中食の市場規模は2019年は10兆円を突破、店内の飲食では10%の消費税が、テイクアウトだと8%という軽減税率も追い風となって依然として拡大傾向にあります」(前出・経済ジャーナリスト)

 2019年の居酒屋産業の売り上げランキング上位でも、トップのコロワイド、2位のワタミ、4位で居酒屋だけでなくレストランチェーンなども展開するDDホールディングスはいずれも既に持株会社に移行している。鳥貴族と同じく1ブランドだけで勝負していた串カツ田中も、2017年12月にやはり持株会社に移行済みだ。さらに5月15日には鶏つながりでまったく業態がかぶる塚田農場のエー・ピーカンパニーも持株会社への移行を発表している。

 1本足経営からの脱却としての持株会社への移行は、居酒屋・外食産業でのポスト・コロナ対応として今後も増える可能性が高いだろう。

(猫間滋)

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