外食事業を展開するワタミは3月29日、運営する焼肉チェーン「焼肉の和民」でメニュー全品を税込429円以下に値下げすると発表した。新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻の影響などを受け外食各社が相次いで値上げを発表する中での大胆な値下げともとれるが、ネット上では従業員へのしわ寄せを懸念する声が少なくない。
「同社の渡邉美樹会長は記者会見で、『世界的食品インフレの中でワタミ史上最大の値下げを行います』と宣言。『焼肉の和民』では全26店舗で29日から順次値下げをスタートさせ、4月19日までに全商品を429円以下での販売に切り替えるといいます。なお、人気の和牛カルビやロースは649円から実に220円の値下げとなり、看板のワタミカルビは値段こそ据え置きですが75gから90gへ増量して販売することを明らかにしています」(フードライター)
ワタミによれば、まん延防止等重点措置の解除後も客足の回復が鈍く、「外食市場全体の再活性化を目指して」値下げを決断したといい、特急レーンや料理配膳ロボットを導入することで人件費を減らし、安定的な仕入先を確保したことで値下げが実現できたと説明している。
しかし、これにネット上では《値下げのせいで従業員の給料も下がらないだろうか。取引先が泣かされてはいないだろうか。無理な値下げはブラック化の温床になるし、もはや賛同できかねる》《このご時世に値下げすれば、どこかに必ず負担はくる。しかも、それをあのワタミがやるとなれば心配せずにはいられない》などと心配の声が多くあがっている。
「ワタミは2013年にブラック企業大賞の大賞に選ばれるなど、企業のブラック体質が問題視されたこともありました。その後、一時はホワイト企業化したと話題になりましたが、20年9月には残業代未払いに関する労働基準法37条違反の是正勧告が出されていたことが明らかになっています。庶民にとって値下げはありがたいことですが、世間にはそんなブラックな体質のイメージがいまだ残っているということでしょう」(経済誌ライター)
いずれにせよ、値下げのシワ寄せで従業員や取引先に悪影響を及ぼさないことを願うばかりだ。
(小林洋三)