「菅政権」で進む地銀再編、「大阪都構想」実現で国際金融センター開設へ

 株式市場では自民党総裁選の結果を待たずとも、「安倍退陣」以後、早くも“最有力”候補となった菅義偉氏による「スガノミクス銘柄」へと関心は移っていた。

 さてその最たるものの1つが、菅氏が総裁選立候補会見で今後メスを入れる分野として携帯電話料金値下げと共に具体的なやり玉として名指しされた地銀の再編だ。金融業界ではこれを“スガノショック”として受け止めているという。

「戦後は長く『1県1行主義』の形で47都道府県に第一地銀と呼ばれる銀行がありましたが、そもそも数が多すぎた上に、東京一極集中化と地方の人口減でさらにオーバーバンキング化は明らか。そこで金融庁でも2015年から地銀の再編を主導してきましたが、これを政治でバックアップしていたのが菅さんなんです。でも、再編はまだまだ不十分。県を超えた地域のブロック経済に見合った地銀の在り方というのが問われているのが現状です」(経済ジャーナリスト)

 さてそんな状況にあって台風の目になりそうなのが、かつてソフトバンクを金融事業で孫正義氏と2人3脚で引っ張った北尾義孝氏が率いるSBIホールディングスだ。北尾氏は昨年9月に「第4のメガバンク構想」なるものを提唱、フィンテックを駆使して地域金融機関との連携を図るなどとしているが、つまりは、単独では生き残り困難な地銀を吸収しようというのだ。つまり、菅氏が言うところの地銀の再編そのものを行おうとしているのだ。

 すると矢継ぎ早に提携が行われ、島根銀行や福島銀行など6行に出資、大東銀行(福島県)では筆頭株主となった。北尾氏によれば常に数行の引き合いがあるそうで、この9月をメドに10行から本格スタートするとのこと。

 さらに9月に入ると今度は大阪・神戸地区を中心に「国際金融センター」を開設する構想も発表。同グループは今年度内にも香港から撤退する見込みだが、香港で1国2制度が失われて様々な金融機関が香港から撤退していく中、これに替わる東アジアの金融センターを日本に打ち立てるのだとしている。

「第4のメガバンクも国際金融センターも共に壮大な構想ではありますが、これが信憑性を持ちつつあります。というのも、地銀の再編については菅さんが再編に言及した9月3日に同時に北尾さんと連絡を取り合っていて、菅さんが『地銀のことをよろしくお願いします』と告げられたそうですし、また、国際金融センターについても吉村洋文・大阪府知事の賛同を既に得ていると明らかにしているからです」(前出・経済ジャーナリスト)

 つまり、政治的な根回しは十分。あとは既に蒔いた種が順調に育って収穫を待つばかりということか。

 翻って大阪の政治状況を見ればこれは渡りに船の願ってもない話で、大阪では11月1日にあの「大阪都構想」の2度目の住民投票が控えているからだ。いうまでもなく都構想は橋下徹氏らが「大阪維新の会」を立ち上げてからの悲願。2015年5月に最初の住民投票が行われて僅差で敗北して以来、捲土重来を期してきた文字通りの悲願だ。大阪に東アジアの一大金融センターができるとあっては、大阪府民も気分が高揚しないわけがない。

 さらに加えて言えば、菅氏と大阪維新との蜜月関係はつとに有名。安倍政権下にあっては、安倍、菅、橋下、松井一郎大阪市長の4者の会食は年末の恒例行事だったほどだ。その中でも菅氏は中央政界における維新の最大の理解者の1人でもある。

 風が吹けば桶屋が儲かるの例えではないが、安部退陣が都構想を勝利に導くか。

(猫間滋)

ビジネス