2時間で16人に警告!愛知県警「ウーバー危険運転」取り締まり強化のワケ

 石川県金沢市の交差点で事故は起きた。9月9日午後8時前、ウーバーイーツ配達員の40代の男性が運転する原付バイクが、軽乗用車と出合い頭に衝突、男性は頭を強く打ち、意識不明の重体に……。そんなニュースが、翌10日、地元の石川テレビをはじめ、各メディアで一斉に報道された。

「現場は片側二車線の見通しの良い直線道路で、押しボタン式の信号があったものの、男性が走っていた道路側に車両用の信号がなく、警察は軽乗用車を運転していた金沢市の大学生から事情を聴き、原因を調査しています。なお、事故が起きた金沢市は、今年4月からウーバーイーツの配達対象地域となっていたようです」(地元紙社会部記者)

 ウーバーイーツ配達員による事故が後を絶たない。全国紙社会部記者が語る。

「かつてウーバーイーツの交通トラブルは首都圏に集中していましたが、大阪、名古屋、福岡、神戸と、エリアが拡大されていくに従い、日本の各地で事故が頻発するようになりました。6月には改正道交法が施行され、多少改善されるのでは、という希望的観測もあったようですが、スマホを見ながらの“ながら運転”や信号無視などの危険運転が、相変わらずSNSなどで頻繁に投稿されていることからも、それほど効果は見られていない様子。配達範囲が広がれば、トラブルや被害がさらに拡大することは間違いないでしょうね」

 そんななか、ようやく重い腰を上げた警察によって、本格的な“ウーバー包囲網”が敷かれつつあるというのは、交通ジャーナリストだ。

「そのトップをきったのが愛知県警で、同警では10日、総勢20人の警察官を動員させ、名古屋市内2カ所で本格的な自転車の危険運転の取り締まりを実施。結果、イヤホンをしたままの運転や信号無視など、わずか2時間の取り締まりで、52人を警告処分にしました。そのうち16人がウーバーの配達員だったそうです」

 愛知県警には以前から、「配達代行の自転車が信号無視している」といった苦情が多く寄せられており、県警は9月4日、ウーバーイーツ運営企業の日本法人に対し、交通ルールの順守を要請したという。

「しかも、県警では、同社で活用してもらうため『歩道走行時は徐行』『車道中央を走行しないで』などと記した啓発チラシをわざわざ用意して提供しているんですね。ところが、配達員は従業員ではなく、仕事を請け負う個人事業主。したがって事故が起きても配達員の責任という、ウーバー側のスタンスは相変わらずで、さらには『安全啓発への取り組みを強化していく』とするだけで、本部が運転マナー改善のため、講習会を開くなど具体的な対策をとる気配すらなかった。ですから、今回の『危険運転取り締まり』は、メンツをつぶされた県警が、取り締まりという名目で行った、対ウーバーへの圧力というのが、関係者の一致した見方です」(前出・ジャーナリスト)

 愛知県警の”ウーバー取り締まり”が、各メディアでクローズアップされたことにより、全国でも同様の取り締まりが強化される可能性は高いが、

「都内でも、高速道路を自転車で走行するなど、さまざまなトラブルがあった。にもかかわらず、警視庁はウーバーへの具体的な取り締まりを示すわけでもなく、交通トラブルが急増してしまった。つまり、今回の愛知県警への称賛は、警視庁のメンツを潰す結果になってしまったというわけです。当然、各警察も愛知県警にならって、ウーバーイーツ包囲網を張っていくことは間違いないでしょうね」(前出・ジャーナリスト)

 これまでの自転車による違反は現場の警察官の判断で、よほど悪質でない限り、大半が指導や警告にとどまることが多かったが、改正道交法で、逮捕や書類送検、起訴や裁判を経て、懲役刑や罰金などの刑事罰を受ける可能性もある。

 ウーバーイーツに限らず、自転車による危険運転には、大きなリスクが伴うことを再認識すべきだ。

(灯倫太郎)

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