「菅首相」誕生で日本はどう変わる? 名物記者が危惧する「官僚支配」の実態

 自民党総裁選の投開票を経て、9月16日の臨時国会でいよいよ新内閣が発足する。やはり、党内の主要5派閥から支持を受けた菅義偉官房長官が、”ポスト安倍”の最有力候補として抜きんでていたのは衆目の一致するところ。

 菅氏が総裁選への出馬を正式に表明したのは9月2日のことだが、この日に行われた会見で、久々に”天敵”と言われる東京新聞の望月衣塑子記者が質問する場面があった。

 会見に出席していた全国紙政治部記者が語る。

「菅氏と望月氏との間では、森友・加計問題、さらには首相主催の『桜を見る会』など、これまで幾度となく激しいやり取りが行われてきましたが、特に昨年1月の官房長官記者会見では、34回中、11回に望月氏が質問。質問数は関連質問を含めると21問におよび、そのうち13問が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事をめぐる問題でした。ところが、今年4月に緊急事態宣言が発令され、以降、首相官邸の記者会見が『ペン記者は1社1人』と限定されたことで、望月氏は官邸の記者会見に出席することができなくなってしまったんです。つまり、今回の菅氏への質問は、実に5か月ぶりだったというわけです」

 会見で望月氏は、これまで会見で「質問妨害」があったことを指摘。「総理になられた際には、会見のあり方を変えるか」という趣旨の質問をしたあと、「(菅氏が総裁に選ばれた際には、事務方が作成した)紙を読み上げるだけでなく、長官自身の言葉、生の言葉で、事前の質問取りもないものも含めて、しっかりと、会見時間を取って答えていただけるのか」と畳みかけた。だが、1分近く続いた質問に、途中、司会者から「すみません、時間の関係で簡潔にお願いします」と注意が入り、それを受けた菅氏は「早く結論を質問してくれれば、それだけ時間が浮く」などと皮肉たっぷりにスルー。おかげで、会見場からは失笑が起こる場面も……。 

 このやり取りに、ネット上では、《望月さん!貴女は社会部の記者だろう。とにかく記者は貴女だけではない。我々国民が聞いてて不快な思いをさせている事は間違いありません。自分だけが正義の味方じゃない》《長々と質問しつつイソコさんあなたが演説ぶってどうする》といった批判の声がある一方、

《東京新聞の望月衣塑子さんが記者会見のあり方を質問したら、菅さんが皮肉でかわし、番記者とおぼしき人達から笑いが起きるとは…。菅さんに媚びを売る笑いで、気持悪い》《ガースーVSモッチーの対決?がんばれモッチー!》と望月氏の姿勢を称賛する声も多かった。

 そんなこともあるのだろう、「菅首相が誕生したら日本はどうなる?」といったテーマで、望月氏のもとにはメディアの取材が殺到。政治家による官僚支配がエスカレートすると指摘する同氏は、

「菅氏が主導したふるさと納税についても、導入前に、自治体間で高額な返礼品競争が起こって高所得者の節税対策に使われてしまう、と反対した総務省の局長が更迭されました。(中略)官僚がモノを言えなくなる空気はより強まると思います」(「AERAdot.」9月6日配信)

「長期政権の中で官僚たちは、たとえダイレクトな指示がなくとも“官邸のために仕事をする”という“忖度”意識が強まってしまった。(中略)菅さんがポスト安倍として就任した場合、“モリ・カケ・桜問題”には、いちばん踏み込まれたくないはずです。(中略)“これまでの安倍政権における悪かった部分が改善されていく”という期待感をどうしても抱けない」(「週刊女性PRIME」9月7日配信)

 と、先行きの不安を口にしていた。

 叩き上げだからこそ、菅氏は安倍首相以上に官僚対策に長けているということなのか……。「菅首相」誕生が現実になろうとしている今、菅氏VS望月記者のバトルはどんな局面を迎えるのか。いずれにしても、会見での“直接対決”は当面、拝めそうにない。

(灯倫太郎)

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