近年、百貨店が各地で閉店・撤退し、業界が苦境に立たされていることは知っている人も多いだろう。そんな中、8月31日にはそごう徳島店が閉店。37年の営業に幕を下ろした。
実は、同百貨店は徳島県内にあった唯一の百貨店。今回の閉店で百貨店ゼロの「空白地帯」となったわけだが、これは山形県に続いて2県目となる。
ちなみに1県目となった山形県は、今年1月に長らく街のランドマークとなっていた百貨店・大沼が突然の倒産。衝撃的な最期を迎え、百貨店が県内から消滅した。それに比べれば、徳島のケースは事前告知のうえの閉店だが、今後はこうした百貨店空白地帯が続出する可能性が高い。
現在、その予備軍とも言える百貨店が1店舗しかない県は、茨城県、山梨県、岐阜県、富山県、福井県、和歌山県、島根県、香川県、高知県、佐賀県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の14県。仮にこれらの県すべてから百貨店が消えた場合、全国の3分の1の地域が百貨店空白地帯となり、しかも近い将来にそうなる可能性は十分あると言わざるを得ない。
百貨店事情に詳しい流通ジャーナリストは、「業界全体の売り上げはこの30年近くで4割超も落ち込んでいる。イオングループをはじめとする複合型商業施設が全国各地で次々と誕生し、百貨店の存在意義が薄れてしまった」と指摘。かつてのような百貨店というビジネスモデル自体が崩れつつあるという。
実際、そごうが撤退した徳島の人たちに話を聞いても「子供のころは家族でよく買い物に来たけど、今はイオンモールやMEGAドンキがあるしね」(40代男性)、「さびしい気もするけど、売り上げ減で閉店は当然のことだと思う」(50代男性)と仕方ないといった声が多かった。
確かに、昔のように週末に家族そろって百貨店に出かけて、お昼はレストラン街でランチなんて過ごし方は、現在はそのまま郊外のショッピングモールにシフトしているとも言える。
中高年世代にとっては思い出も多いかもしれないが、これも時代の流れなのだろう。
(トシタカマサ)