奥川恭伸「一軍デビュー」は来季に持ち越し!? 温存の影に“メジャー流”育成

 早期の登板はナシ。このまま行けば、今季は体幹トレーニングを組むだけで終了となりそうだ。東京ヤクルトの黄金ルーキー・奥川恭伸には“リック・ハニカット氏”の育成プランが用いられている。その指示を出しているのは、斎藤隆投手コーチである。

 リック氏は、現在はドジャースのフロント要職にある人物だが、投手指導に長けた名コーチでもあった。そのドジャースのユニフォームを着た斎藤コーチは、同氏の薫陶を仰いでいる。

「斎藤コーチは大学時代から交流のある高津臣吾監督のオファーを受けて、ヤクルトコーチに就任しました。いちばん最初に着手したのは、全投手の故障歴を知ること。次は、全投手の骨格や特徴を把握し、個々に合わせた指導を行おうとしていました」(関係者)

 その斎藤コーチの初指導となった昨秋キャンプが始まった時点で、奥川指名のドラフトは終了していた。2019年は12球団ワーストの防御率だっただけに甲子園の雄の一軍デビューは「さほど時間は掛からない」との見方もされていた。しかし、高津監督を始め、首脳陣は全否定していた。

「実際、1月の新人自主トレで右肘を痛めてしまいましたからね。ただ、高津監督は本心では早く投げさせたくてウズウズしていたんです。周囲がそれを諫めていました」(前出・関係者)

 7月20日の楽天二軍戦以降、奥川は実戦登板していない。上半身のコンディション不良のためだが、以後、ノースロー調整が続いている。

「このまま、シーズン終了まで登板しない可能性もあります。投げたとしても、終盤戦での顔見せ程度でしょう」(スポーツ紙記者)

 メジャーのドジャースで14年にわたって投手コーチを務めてきたリック氏流の育成法は、今では他球団からも模倣されている。投手の特徴から故障歴まで全てを把握し、個々に適した育成プログラムを組む。全体練習はあるが、個別に課す強化メニューは大きく異なる。

「マイナーには160キロのスピードボールを投げる若手も珍しくありません。でも、すぐにメジャーに昇格させることはしません。先発タイプのピッチャーなら、1年を通じてローテーションをこなす体力を養わせ、リリーバーなら体調管理や、連投にも耐えられる体力、突然の登板にも対応でき、かつ自身に合った肩の作り方を見つけさせます」(米国人ライター)

 奥川の登板回避だが、コンディション不良とは、不振と疲労の蓄積。疲れているときこそ、故障しやすいものだ。

「奥川にはペナントレースを乗り切る体力がまだないと判断したようです」(前出・関係者)

 そういえば、過去に逆上ってみると、ヤクルトの主力投手はシーズンを棒に振るような故障も多かった。高津監督と斎藤コーチは故障を防ぐことを最優先事項に変えたようだ。奥川の一軍デビューは随分と先になりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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