みずほ銀行が通帳や印鑑の要らないデジタル口座を開設することを発表した。
みずほ銀行が示したのはデジタル・リモートサービスの拡充で、文字通り、通帳、印鑑そしてペーパーレスの口座が設けられることになる。法人、個人ともに来年1月より紙の通帳を発行する場合は、70歳未満の利用者を除いて1100円の手数料がかかるようになるという。
銀行の通帳レスの流れは今年から急速に広がり、例えば三菱東京UFJ銀行では、1月からEco通帳というネット通帳に切り替えると現金1000円がもらえるキャンペーンを実施。ゆうちょ銀行でも同時期にやはり「ゆうちょダイレクト+」への移行によって、現金1000円が当たるキャンペーンを実施した。Eco通帳もゆうちょダイレクトもいずれも通帳レス口座のことで、ゆうちょは抽選で3000人だったが、三菱に関しては先着10万人で総額1億円という本格的なものだった。
そしてこうした流れを受けて三井住友、りそなの大手行も通帳レスを推進し、地銀や信金でも通帳レスのネット口座への移行が相次いだ。
そもそも印鑑は日本独自の文化として以前にも不要論が起こって話題となったが、通帳というのも必ずしも共通なものではない。例えばアメリカは口座を開設しても通帳はなく、もちろん印鑑も要らない。口座の残高はネットバンキングで確認するか、毎月送られて来る明細で確認するのが世界的には一般的だ。
そこへきてのみずほの通帳レス化なのだが、この銀行の場合だとどうしても、「やっと今さら」の声が業界関係者から上がってしまうのも仕方がない。
「同行の場合は第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併して以後、経営やシステムの統合が遅れに遅れたのは今さら言うまでもない話。しかも、ネット銀行以外は口座数が明らかにされていないので正確な数字はわかりませんが、みずほの個人顧客は2400万人で、5人に1人がみずほの口座を持っていると公言するほど口座数が多い。ということは、紙の通帳の発行・口座管理上のコストは他行よりもかかるのでデジタル移行は他行より急がれるはずなんですが、どうもいつも時代に合わせた変化では後塵を拝する傾向がありますね」(金融ジャーナリスト)
発表のタイミングとしては、極力モノを介さない「新しい生活スタイル」に即応しようとしたものに受け取れるのだが、どうしてもこうした声が上がってしまうのも同行の場合はいたしかたないのかもしれない。
(猫間滋)